宝くじが当たると、人は本当に幸せになれるのか?

宝くじに当たった人

宝くじに当たると人生は変わる…… のかもしれない。

Matt Cardy/Getty

  • スウェーデンでは、宝くじに当たった人は当たらなかった人より、人生に対する満足度が高いことが、スウェーデンとアメリカの研究者による最新調査で明らかになった。
  • そして、その満足度は時間が経っても薄れないという。
  • しかし、これまでの研究では、宝くじに当たっても、最終的な人生の満足度や幸福度は変わらないとされてきた。
  • 健康と幸せのためには、親密な人間関係といったお金以外のものを大切にする方が良いと言えそうだ。

莫大な財産を手に入れた人の人生がどのように変化するのか、そのあらゆる可能性について、社会科学者は思考をめぐらせてきた。豪華な家や車を買えるようになるのだろうか? 自身が新たに手にした経済力をどう感じるのだろうか?

これまで数十年にわたっていくつもの研究が行われ、その結果は、宝くじに当たっても日々の生活は少しも変わらず、当たったときの興奮は次第に冷めていくと示している。しかし、最新の研究成果報告は異なる結論にたどり着いた。宝くじに当たると、外れるよりも間違いなく人生の満足度が上がるという。

この研究成果は、収入と人生の満足度との関連について研究している経済学者のジャスティン・ウォルファース(Justin Wolfers)氏がニューヨーク・タイムズで紹介したものだ。この研究報告はまだ査読が済んでおらず、科学誌にも掲載されていない。

この研究は、スウェーデンとアメリカの研究者が、宝くじを購入した3362人(当選者及び落選者)を対象に、宝くじを買った後、5年から22年にわたって、その健康状態について調査している。調査対象者には、彼らの幸福や人生全般に対する満足度、メンタルヘルス、経済的な満足度について尋ねた。

その結果、全ての設問 —— 中でも人生の満足度について、宝くじに当たったことがプラスの効果をもたらしたという。そして、興味深いことに、経済的な満足度を除く全ての項目で、その効果は時間が経っても消えなかった。

ただし、注意しなければならないのは、これはアンケート調査だということだ。つまり客観的な尺度はなく、調査対象者自身がどれだけ自分の人生に満足しているか答えている。さらに、別の調査はこれとはまた異なる結論を導き出している。

結局、満足度は変わらない?

これまでの研究では、宝くじに当たっても人生の満足度に大きな影響はないことが分かっている。

Business Insiderでは以前、宝くじに当たった人の幸福度は、最終的には当選前に感じていた幸福度と変わらないとした2つの研究紹介した。これは、いわゆる「快楽順応」によるものだろう。

その一方で、別の調査は(宝くじに当たる以上に)幸せで満足のいく人生を送るために必要な金額は、さほど大きくないことを示している。以前、Business Insiderが報じた『Nature Human Behavior』に掲載された研究によると、世界的に見て、満足のいく人生を送るのに理想的な収入は約9万5000ドル(約1070万円)で、精神的な安定のためには大体6万~7万5000ドル(約670~840万円)が理想だという。

ここから学べることがあるとすれば、幸福感あるいは満足感を得るためにお金に頼るのは、賢明ではないということだろう。結局のところ、こうした新たな研究結果を信じても、宝くじに当選できる可能性はごくわずかだ。そうであれば、友人や家族との絆を深め、からだを動かすことだ —— 昔ながらの考えだが、健康と幸せにつながると大半の研究者も認めている。

[原文:Scientists say winning the lottery does make people feel better about life — even though decades of evidence suggests otherwise

(翻訳:仲田文子、編集:山口佳美)

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