サン・ピエトロ広場で人々に手を振るローマ法王。
Massimo Valicchia/Getty Images
ローマ法王は代わっても、法王が"家"と呼ぶ場所が変わることはない。
バチカン市国、カトリックの総本山、法王聖座は、イタリア・ローマのテベレ川西岸に位置する。第266代ローマ法王フランシスコは、12億9000万人のカトリック信者の指導者で、2013年に法王に選ばれて以来、バチカン市国の城壁の内側で暮らしている。
バチカンは数千年にわたる歴史を持ち、訪れる人々に畏敬の念を抱かせ、スピリチュアルなパワーを感じさせる場所だ。
世界で最も力のある宗教指導者が"家"と呼ぶ、小さな美しい国の中をのぞいてみよう。
バチカン市国は、四方を完全にローマに囲まれている。世界最小の国で、面積はわずか100エーカー(約0.4平方キロメートル)ほどだ。
バチカン市国全体の立体模型。
Wikimedia Commons
出典:CNN
この城壁をくぐった訪問者はまず、広々としたサン・ピエトロ広場を目にすることになる。ドーリア式円柱に囲まれ、中央にはローマ皇帝カリグラがエジプトから運ばせたと言われる巨大なオベリスクがそびえ立つ。
サン・ピエトロ広場。
Gabriela Fab/Flickr
出典: History Channel
サン・ピエトロ広場は、バルコニーから語りかけるローマ法王の言葉を聞くために、信者が集まる場所でもある。
2017年4月16日、復活祭のミサを執り行うフランシスコ法王。
L'Osservatore Romano/Pool Photo via AP
フランシスコ法王がサン・ピエトロ広場を歩いている姿もしばしば見られる。法王は、大衆の味方であることを誇りに思っている。
2014年12月17日、一般謁見演説に向かう笑顔のフランシスコ法王。
Tony Gentile/Reuters
出典:Time
バチカンの中心は、サン・ピエトロ広場にそびえたつサン・ピエトロ大聖堂と言っても間違いないだろう。今日の姿になるまでに120年かかった。
ローマから見たサン・ピエトロ大聖堂。
Dennis Jarvis/Flickr
出典:Catholic Encyclopedia
この大聖堂は、ローマ皇帝ネロが聖ペテロを処刑したと言われるバチカンの丘に建っている。その凝った装飾と荘厳なモニュメントは、世界的に有名な画家や彫刻家の手によるものだ。
サン・ピエトロ大聖堂。
Gregorio Borgia
出典:CNN, History Channel
頭上には巨大なクーポラ(ドーム)があり、床から天井までの高さは約450フィート(約140メートル)。歴史上最も優れた彫刻家として名高いミケランジェロの設計だ。
サン・ピエトロ大聖堂のクーポラ(ドーム)。
Erik Drost/Flickr
出典: CNN, History Channel, The Vatican
551段の階段を上ってクーポラの一番上まで行くと、ローマの街並みと大聖堂の裏に広がるバチカン庭園の壮大な景色を見ることができる。
バチカン庭園の眺め。
Sean O'Neill/Flickr
1279年に作られたバチカン庭園は、ローマ法王がプライベートでくつろぐ場所となっていて、通常、観光客は立ち入り禁止だ。広さは57エーカー(約23万平方メートル)と、バチカン市国の面積の半分以上を占めている。
バチカン庭園。
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庭園の緑の中に、バチカン政庁舎といった多くの建物が見える。庭園の端には、ローマ法王のヘリポートもある。
バチカン政庁舎。庭園の端の塔の裏がヘリポートになっている。
Ruth Johnston/Flickr
ヘリポートにはラテン語で書かれた碑文がある。「ローマ法王パウロ6世は、その移動手段からバチカン市国をより便利に、より快適に見下ろせるようになっただろう」
ヘリポートの碑文。
Seth Shoen/Flickr
大聖堂の北、庭園に隣接したバチカン宮殿は、複数の建物で構成されていて、1000室以上の部屋がある。
バチカン宮殿。
daryl_mitchell/Flickr
バチカン宮殿には礼拝堂や政府庁舎、住居などが含まれ、ローマ法王は14世紀末からこの一連の建物群を"家"と呼んでいる。
バチカン宮殿の一部であるベルベデーレ宮殿。
Jean-Pol Grandmont/Wikimedia Commons
出典:CNN, History Channel
バチカン宮殿の建物群の大部分は、世界最大の博物館の1つ、バチカン博物館になっている。
バチカン博物館、ピーニャの中庭。
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博物館の回廊の長さは、9マイル(約14.5キロ)もある。博物館を鑑賞するのに作品1つあたり1分を使うと、全てを見るには4年かかるという。
Gary Ullah/Flickr
展示は天井や柱廊、壁、柱と、至るところに広がっている。
バチカン博物館の天井。
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博物館の目玉は、ミケランジェロの傑作が複数あるシスティーナ礼拝堂だ。ミケランジェロやその他のルネサンスの芸術家たちが、礼拝堂ができてから60年以上をかけて完成させた。
システィーナ礼拝堂の中では、騒いではいけない。警備員が定期的に見回りをしていて、観光客を注意することも。
Alexander Parsalidis/Flickr
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システィーナ礼拝堂は、枢機卿が次の法王を投票で選ぶコンクラーベが行われる場所でもある。新しい法王が決まると、礼拝堂の煙突から白い煙が上がる。
システィーナ礼拝堂から上る白い煙。
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システィーナ礼拝堂の隣はバチカン宮殿だ。もともとは法王シクストゥス5世の住居として作られ、以来、何世紀もの間、ローマ法王の住まいだ。
バチカン宮殿。
Pier Paolo Cito/AP
出典:CNN
バチカン市国の他の全ての場所と同じように、バチカン宮殿の内部も見逃せない。
バチカン宮殿、クレメンスの間。
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バチカン図書館も同じように装飾が施されていて、ローマ法王はここでしばしば外国要人を迎える。
バチカン図書館で客人を迎える、ベネディクト16世。
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バチカン宮殿は世界最小の軍隊、スイス衛兵が厳重に警備している。彼らは1506年以降、ローマ法王を護衛している。
バチカン宮殿、スイス衛兵。
Alessandro Di Meo/ANSA via AP
スイス衛兵になるには、19〜30歳の独身、カトリック教徒のスイス人でなければならない。その制服は1506年当時からほとんど変わっていない。
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だが、バチカン宮殿がいつも安全とは限らない。ローマ法王は何度か「パセット・ディ・ボルゴ」と呼ばれる秘密の通路を使って逃げたことがある。この通路はテベレ川沿いにあるサンタンジェロ城につながっている。
パセット・ディ・ボルゴ。
queulat00/Flickr
フランシスコ法王はこれまでの伝統を破り、バチカン宮殿に住まないことを選んだ。代わりに、バチカン市国内の質素な宿泊施設で暮らしている。
バチカンの宿泊施設。
Johannes Müller/Wikimedia Commons
華やかな宮殿とは違い、その宿泊施設はこぢんまりとしている。
アルゼンチンのクリスティーナ・フェルナンデス・デ・キルチネル大統領(当時)とフランシスコ法王。
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派手さを嫌うフランシスコ法王だが、説教や会議などの合間にバチカンでの生活を楽しんでいるようだ。
バチカンで、セルフィーに加わるフランシスコ法王。
Reuters/L'Osservatore Roman
幾度かの緊迫した状況を乗り越え、バチカン市国は何世紀にもわたってカトリック教会の長い歴史の証として存在してきた。
Franco Origlia / Stringer / Getty Images
そして、ローマ法王は代わるが、彼らが"家"と呼ぶこの場所は、永遠の都ローマをこれからも輝かせ続けるだろう。
夕暮れのバチカン。
N i c o l a/Flickr
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:山口佳美)