コインチェック和田社長27歳、出発点は「ビリギャル」

580億円相当の仮想通貨を流出させたコインチェック。深夜会見場に現れた和田晃一良(こういちろう)社長は、「深くお詫びします」と謝罪した。会見中には時々言葉につまる場面もあった。

後発ながら、出川哲朗のCM効果もあり、一気に知名度を上げ、日本最大級の仮想通貨取引所となったコインチェック。27歳、しかもエンジニア出身の和田社長とはどんな人物なのか。

コインチェックのオフィス

コインチェックのオフィス。2017年7月に現在の場所に移転した。

撮影:小田垣吉則

ハッカンソン常連、起業家界隈では有名な存在

和田社長は、小学校高学年からプログラミングに興味を持ち、東京工業大学時代にはアプリ開発ができるようになっていた。3年時にはウェブアプリ開発会社でアルバイトし、クックパッド主催第3回開発コンテスト24など、さまざまなハッカソンで優勝するなど、若手の起業家界隈では知られた存在になっていた。

就活では「自分で事業を生み出す力をつけられるか」を重視、サイバーエージェントを選ぶ。だが実際就職する前に、大学の知人に紹介されたレジュプレスというスタートアップの立ち上げに参画することを決めた。「起業自体には興味がなかったけど、事業を生み出す力をつけられるなら、そっちでチャレンジしたほうがいいのではないか」という理由だった。

大学を休学して、参画したレジュプレスでは、ほぼ一人で人生のストーリー投稿サイト「STORYS.JP」を開発、「ビリギャル」などの人気コンテンツを生み出した。2年程度で10作品が書籍化され、総発行部数は120万部超。人気サービスに成長させた。

投資家は反対、逆に「チャンス」と事業転換

なぜ事業領域の異なる仮想通貨取引所というビジネスを立ち上げたのか。

和田社長は2017年12月、Business Insider Japanの取材にこう答えている。

「STORYS.JPは『自分語り』という文化を自分たちで作るハードルの高いサービスだったが、会社の成長を考えたときに、次は時代の潮流に乗るサービスを考えていた。いろいろ考えたが、当時ビットコインなど仮想通貨が新しく出てきていて、将来それを利用したサービスが出てくると思った」

コインチェックの和田社長

創業者の和田社長。大学時代からアプリ開発を手掛けていた。

撮影:小田垣吉則

2014年8月にサービスを始めた時には、すでに“国内初”の仮想通貨取引所としてゴールドマン・サックス証券出身の加納裕三氏(41)がbitFlyerを立ち上げていた。先行するサービスについてはこう答えている。

「当時、仮想通貨を扱う取引所は他に3〜4個あったが、あまり使いやすくなかった。なかなか登録までたどり着かないなど、ウェブをよくわかっていない人が作ったサービスになっていた。自分たちはそれまでtoC向けのサービスを作っていて、知見があった」

「日本一簡単な取引所」を目指したはずが

投資家らはこの事業に反対したという。当時はビットコインには、世界最大の取引所「MTGOX(マウントゴックス)」が破綻するなど、マイナスのイメージが付きまとっていたからだ。だが、和田社長は「大企業や上場している企業は参入できない領域で、スタートアップからすると逆にチャンス」だと思ったという。

コインチェックの和田社長

撮影:小田垣吉則

金融業界の経験がないことも周囲から心配された。実際にサービスを始めて、ユーザーを集めて納得してもらえればいいと、株主にもほとんど何も告げずにサービスを立ち上げた。

12月のインタビューの時点では圧倒的に自分たちのサービスの使い勝手に自信を持っていた和田社長。2017年に急激に伸びた理由について、コインチェックが扱っている仮想通貨の種類が多かった点を挙げたが、記者会見ではシステムの脆弱性、危機管理体制の甘さについて厳しい指摘が相次いだ。

「いろんな人の意見を聞いていると、丸まったアイデアになってしまう。自分で作れたからこそ、思い切った意思決定、『日本で一番簡単にビットコインを買える取引所』という尖ったサービスを作れた」 とインタビューで答えていた和田社長だが、その独断と“尖り”が今回の危機を生んだのかもしれない。

(文・浜田敬子、室橋祐貴、編集・浦上早苗)

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