奥の細道
色の浜(福井県敦賀市)
寂しさや須磨に勝ちたる浜の秋
(さみしさやすまにかちたるはまのあき)
寂しさにもまた質量感がある。色の浜の秋の只中にいて、その風景の圧倒的な寂寥感に感嘆した句。かつて須磨・明石で経験した暮秋の侘しさがかえって色あせて見えるようだと、色の浜の迫力のある侘しさを称えたもの。
波の間や小貝にまじる萩の塵
(なみのまやこがいにまじるはぎのちり)
西行が詠んだ「汐染むるますほの子貝ひろふとて色の浜とはいうにやあらなむ」(山家集)を踏まえた句。西行ゆかりの色の浜に出て、ますほの小貝を拾おうとして、思いがけずも波間に汐を赤く染めて漂う萩の塵を見出だした喜びを語った句。