24時間体制でわずかな地盤の変化を観測
南海トラフでの巨大地震の前兆となる、ごくわずかな地盤の変化を観測できる「ひずみ計」が2024年2月18日、大分県佐伯市に設置された。気象庁は、東海地方一帯から四国にかけて配置されたひずみ計で常時観測を行っており、初めて九州が加わる。静岡県沖から九州沖まで延びる南海トラフに対し、広範囲での監視が必要になる中、同庁は「観測網の『空白域』が大きく縮小される」としている。
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地震計で測れない「ゆっくりすべり」
ひずみ計は、地下深くの岩盤のわずかな伸び縮みを高感度で検知できる観測機器。データが自動転送される仕組みで、気象庁が24時間体制で変化を監視している。
南海トラフで起こる巨大地震は、プレートの境界付近でわずかに動く「ゆっくりすべり」が引き金になる可能性が指摘されている。ただ、ゆっくりすべりは数日から数年かけて発生し、通常の地震計では変化を検知できない。
従来は静岡から四国まで39か所で観測
このため、気象庁や産業技術総合研究所(産総研)などは1975年以降、想定震源域やその周辺の地下数百mにひずみ計を設置。過去の大地震の事例を基に東海から順に整備され、静岡県沖から四国までの39か所に設けられたが、想定震源域の西端にあたる九州にはなかった。
大分県に設置、宮崎県にも
産総研は18日、佐伯市の廃校となった土地の地下約550mに設置した。1、2年ほどかけて観測データの安定性を確認した上で、気象庁へのデータ転送を開始し、観測網の一つとして運用される。産総研は宮崎県でも2024年度中の設置を目指しており、場所の選定を進めている。
日向灘の観測体制強化へ
政府が2019年に導入した「南海トラフ地震臨時情報」は、ひずみ計のデータから、想定震源域でゆっくりすべりが起きたと判断した場合や、マグニチュード7級以上の地震が発生した後に、巨大地震への注意を呼びかけることになっている。
産総研の担当者は「大分、宮崎両県に設置することで、これまで手薄だった日向灘の観測体制を強化することができる。今後も九州の太平洋側で観測点を増やしていきたい」としている。
(読売新聞 2024年2月18日掲載 社会部・池田寛樹)
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