【聞きたい。】ひょっこりはんさん 『ひょっこりはんをさがせ!』
[文] 産経新聞社
■子供たちの笑顔が一番の幸せ
子供たちにはいつも笑顔でいてもらいたいと願っている。その思いから、初めての本も子供が大人と一緒に楽しめる絵本になった。
「街中に隠れてひょっこりと出てくるのを当てるというのは、以前からSNS(会員制交流サイト)の動画でよくやっていた。本にするなら、まずこれをやりたいというところはありましたね」と打ち明ける。
全世界で累計6500万部を売り上げた英国製絵本「ウォーリーをさがせ!」のいわばパロディーだが、独自の工夫も満載だ。
メインの楽しみ方は、例えば5月はペルーのマチュピチュ、9月はインドのタージ・マハルと、1年12カ月分の世界遺産を描いたイラストの中から、ひょっこりはんを探し出すというもの。
これに加えて、11月なら「七五三のきょうだい」「酉(とり)の市の大熊手を持っている人」といった季節ごとの特徴的なキャラクターも隠されていて、親子で日本の季節感について語り合うきっかけにもなる。
「『何で8月にリンゴあめ売ってるの』『夏祭りの季節だから』と、家族でわいわい言いながらお勉強にもなるというわけです」
音楽に合わせて物陰から「ひょっこり」と顔を出す芸が受けて、子供たちに絶大な人気を誇る。東京・八重洲ブックセンターで行われた出版記念イベントには、親子連れを中心に70組のファンが列を作った。
「最初は誰かに向けてやるものではなく、自分が一番伝わるのは何だろうと考えて編み出したのが、ひょっこりはんだった。ずっと手探りでやってきたが、その願いが子供たちに届いたという感じですね」
子供を意識すると、毒のある刺激の強い笑いはできないが、もともと人を傷つける笑いは嫌だという気持ちが根っこにある。
「子供たちが笑うのを見るのは、みんな一番の幸せでしょう。子供を通じて大人も笑顔になる。天使だなと思いますね」(宝島社・830円+税)
藤井克郎
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【プロフィル】ひょっこりはん
昭和62年、滋賀県生まれ。早稲田大学人間科学部卒業後、お笑い芸人の道へ。趣味はヨガ。