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IMF、世界経済の成長率見通しを小幅に上方修正-リスクも警告

  • 今年の世界成長率を3.2%と予想-インフレ持続と戦争が懸念材料
  • 米国の成長率予測は2.7%に引き上げ、中国は4.6%で据え置き
The International Monetary Fund headquarters in Washington, DC.
The International Monetary Fund headquarters in Washington, DC. Photographer: Samuel Corum/Bloomberg

国際通貨基金(IMF)は、米国と一部の新興市場の好調を理由に今年の世界経済成長見通しを小幅に上方修正した。インフレと地政学的リスクが続く中、見通しには依然として注意を要すると警告した。

  16日に発表された最新の世界経済見通し(WEO)では、今年の世界経済成長率を3.2%と予想。1月時点の予測から0.1ポイント引き上げた。2025年の成長見通しは3.2%で据え置いた。

  ブルームバーグ・エコノミクス(BE)は、今年の世界成長率を2.9%、来年を3.1%と予想している。

  見通しの上方修正にもかかわらず、IMFは高い借り入れコストと財政支援の引き揚げが短期的な成長の重しとなっていると指摘。中期的な見通しは過去数十年で最も弱いままで、生産性の低さと世界的な貿易摩擦が理由だと論じた。

IMF Sees Most Economies Expanding This Year

Gross domestic product (YoY change)

Source: IMF WEO April 2024

Note: Mapped data show forecasts for 2024 output for distinct economies

  IMFのチーフエコノミスト、ピエールオリビエ・グランシャ氏はWEO発表に伴うブログで、執拗(しつよう)なインフレと世界的な不平等の拡大に言及し、「多くの課題が残っており、断固とした行動が必要だ」と呼び掛けた。

  世界経済は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)後、最悪のスタグフレーションの危機は回避したものの、今後数年間は潜在成長率が伸び悩むとの見方をIMFは示した。

  中央銀行のインフレ対策は正しい方向にあるが、勝利を宣言して金融緩和を行うのは時期尚早だとし、同時にウクライナと中東の戦争に起因する成長へのリスクは特に大きいと指摘した。

  IMFはまた、低所得国の成長率見通しを引き下げ、世界の残り地域と比べ弱い成長にとどまると懸念を表明。これらの国々は、ドル高や食料、燃料、肥料価格の高騰により、予想を上回るインフレに見舞われている。

  「米経済は既にパンデミック前のトレンドを超えて成長している。しかし、パンデミックと生活費危機からの立ち直りにまだ苦労している多くの低所得国には、追い打ちがかかると予想される」とグランシャ氏は分析した。

  今後についての下振れ要因としてはウクライナや中東での戦争がインフレをあおり、金利上昇期待を助長し市場とセンチメントを圧迫するリスクがあるとみている。

Inflation Is Set to Continue to Slow Across the World

Average consumer prices (annual change)

Source: IMF WEO April 2024

  中国の不動産問題や、主に米中の戦略的競争によって世界経済の分断が悪化するリスクにもIMFは触れた。

  上振れ方向のリスクとしては、インフレ率が予想以上に鈍化し、中銀が早期に政策緩和を実施する可能性を挙げた。

  2022年に数十年ぶり高水準に達したインフレはその後、積極的な利上げサイクルのおかげで鈍化してきた。しかし、米国を含む一部の経済大国では、まだ目標に達するほど低下してはいない。それでも、IMFは今年後半のある時点で主要先進国・地域が利下げに転じると予想している。

  世界の消費者物価は平均で恐らく今年5.9%、来年4.5%上昇すると見込まれ、いずれも1月時点の予測から0.1%ポイント引き上げられた。

Inflation Will Still Be Above 2% in Most Economies in 2024

Consumer price growth (YoY change)

Source: IMF WEO April 2024

Note: Mapped data show forecasts for 2024 inflation for distinct economies

  今年の米成長率見通しについては、1月時点の2.1%から2.7%に引き上げた。ユーロ圏はおよそ2年にわたる金融引き締めとエネルギー価格上昇の影響が遅れて表れるとして、若干下方修正した。

  中国は今年4.6%、来年4.1%成長となる見通しで、1月の予想から変更なし。不動産セクターと内需の弱さが経済活動を圧迫する見込みだ。過剰に生産した製品を輸出する中国と他国の貿易摩擦が生じる可能性があるとも、IMFは警告した。

  ロシアは主要国の中で最も大きく成長見通しが引き上げられた。IMFは世界的な原油価格上昇の中でインドと中国への石油輸出が好調なことを理由に、今年は3.2%、来年が1.8%と、それぞれ0.6ポイントと0.7ポイント上方修正した。インドの今年の見通しは6.5%から6.8%に引き上げられた。

 

IMF Growth Projections

Source: International Monetary Fund

  IMFはまた、異例なほど強く米国を批判した。最近の米国の経済パフォーマンスは「印象的」であり、世界の成長の主要な原動力となっているが、その一因は「長期的な財政の持続可能性を逸脱した」財政政策にあると分析。

  米国のこのような政策が短期的にインフレリスクを再燃させているばかりでなく、他国の借り入れコストを押し上げることで世界経済の長期的な財政・金融安定リスクを生んでいると警鐘を鳴らした。

IMF、米国への警告を強化-支出と債務の膨張を指摘

原題:IMF Lifts Growth Forecast for Global Economy But Warns of Risks(抜粋)

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