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「誰も望まない」米大統領選、熱狂なきバイデン・トランプ再対決

  • 有権者の14%、バイデン・トランプ両氏いずれの勝利にも反対-調査
  • 50歳未満の米国民、ほぼ半数が2大政党以外の選択肢を希望-調査
Biden and Trump.
Biden and Trump.

Photo illustration: 731; photos: Getty Images

米大統領選挙まで残り1年となった。国民の間では2大政党への否定的な見方が過去最多に上り、有権者の大半は、ジョー・バイデン氏とドナルド・トランプ氏のいずれにも大統領になってほしくないと話している。つまり、誰も望んでいない選挙と言えるだろう。

  より良い選択肢を期待する人は失望することになりそうだ。有権者も党指導部も両氏に疑問を抱いているが、来年1月に予備選が始まれば、両氏がそれぞれの党の候補指名を獲得するとの見通しを同じ世論調査が示している。過去に現職大統領が敗北し、4年後に同じ相手と対決して再選を果たしたのは、1892年にグローバー・クリーブランド氏がベンジャミン・ハリソン氏と対決したのが最後だ。

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Photo illustration 731; photo: Getty Images

  米国民の間で再選への熱狂は見られない。ワシントン・ポストとABCニュースが最近実施した世論調査によれば、大統領としての仕事ぶりに満足しているとの回答はバイデン氏が37%、トランプ氏も38%にとどまる。一方で、あと1期務めるには両氏とも高齢過ぎるとの回答は半数を占める。大統領候補が本選で中道寄りになることはよくあるが、「より若い方向へと軸足を移すことはできない」と、クリントン元大統領の最初の選挙戦を指揮したジェームズ・カービル氏は警鐘を鳴らす。

  バイデン、トランプ両氏とも高い支持率を維持したことはない。しかし、否定的な見方は強まっている。NPRとマリストの世論調査によると、有権者の65%がバイデン氏の再選に反対で、トランプ氏についても60%が再選を望んでいない。有権者の約6人に1人(14%)は、両氏いずれの勝利にも反対している。この比率は前回2020年の大統領選でトランプ氏とバイデン氏の両方を嫌った人の4倍余りに上り、24年の選挙を左右するのに十分な規模だろう。民主党のベテラン政治ストラテジスト、ダグ・ソスニック氏は「問題は、彼らが誰を支持するかだ」と話す。

  政治に関して、米国民の意見が一致することはあまりない。しかし、ハーバード大学とハリスの最新の世論調査によると、民主党支持者の68%、共和党支持者の57%、無党派層の78%は同意見であることが分かった。いずれも過半数はトランプ氏でもバイデン氏でもなく、「別の選択肢」を望んでいるということだ。

  とはいえ、有力な対抗馬は見当たらない。民主党の予備選でバイデン氏の候補再指名を脅かすような相手はいない。ファイブサーティーエイトがまとめる世論調査の平均によれば、共和党予備選でトランプ氏は他のすべての候補者の合計を上回る支持を集めている。

Second Republican Primary Debate Held At Ronald Reagan Presidential Library
9月27日に行われた共和党指名を争う候補者による討論会
Photographer: Mario Tama/Getty Images

  共和・民主両党とも、前回と同じ2人で大統領選に臨むもようだが、これに至る道のりは違った。トランプ氏の強さの源は、共和党を支持する一般有権者の間で根強い人気を維持していることだ。共和党のエスタブリッシュメント(支配層)はトランプ氏が無党派層や郊外の女性の間で不人気な点に加え、計4件で起訴されていることを懸念しているが、圧倒的なトランプ人気がこれを打ち消している。

  20年の選挙でトランプ氏が敗北し、とりわけ21年1月6日の連邦議会襲撃事件を受けて、共和党の指導部と大口献金家は次に進む準備を整えていた。新しい世代の知事、上院議員、元閣僚らが共和党の候補指名を目指し名乗りを上げた。献金家もこれに続き、フロリダ州のロン・デサンティス知事ら候補者に惜しみなく資金を提供した。

Money Raised by GOP Candidates

Through September 2023

Source: Federal Election Commission

*Pence suspended his campaign on Oct. 28.

  ところが、トランプ氏は再選を果たせなかった大統領は潔く身を引くとの筋書きには従わなかった。これまでの敗者のように、共和党の一般有権者から見放されることもなかった。選挙で勝利を盗まれ、自身に対する起訴は「ディープステート(闇の政府)」による恥知らずの攻撃といった主張を、熱狂的な支持者たちに信じ込ませることができたからだ。

  バイデン氏の次を求める民主党支持者は、全く逆の問題を抱えている。世論調査によれば、有権者は選挙日までに81歳になるバイデン氏を再選させることに大きな懸念を抱いている。8月のAP通信の調査では、民主党支持者の69%がバイデン氏は大統領として効果的な仕事を行うには「年を取り過ぎている」と回答した。

  それでも、民主党のエスタブリッシュメントはこうした懸念を無視し、バイデン氏支持で結束している。

  こうした民主党の状況が鮮明となるエピソードがあった。バイデン氏は6月に行った資金集めパーティーで、ウクライナを「イラク」と、「良き友人」であるインドのモディ首相を「習近平(中国国家主席)」と言い間違えた。バイデン氏は翌朝、ホワイトハウスを出るときに再びイラクとウクライナを混同した。

  だが、その直後、民主党の献金家はバイデン氏を擁護するために列をなし、世間の関心をトランプ氏へとそらそうとした。

  トランプ氏が共和党の大統領候補になることは不可避との見方が民主党内で広がっていることも、バイデン氏の候補再指名を後押ししている。20年の大統領選でトランプ氏を破り、22年の中間選挙でも共和党に善戦した実績を踏まえると、党内で最も勝算のある候補者だと考えられているためだ。

  こうした中、比較的若い有権者はトランプ、バイデン両氏に一貫して否定的な見方を示しており、より良い選択肢を切望している。10月19日のピュー・リサーチ・センターの世論調査によると、50歳未満の米国民のほぼ半数が、2大政党以外の選択肢を望んでいることが分かった。

  11月1日のキニピアック大学の世論調査では、出馬を表明しているロバート・ケネディ・ジュニア氏とコーネル・ウェスト氏を選択肢に加えたところ、バイデン、トランプ両氏にとって気がかりな兆候を示す結果が出た。四者択一の対決では、バイデン氏の支持率(36%)がトランプ氏(35%)、ケネディ氏(19%)、ウェスト氏(6%)を上回ったものの、有権者の4分の1が主要候補を敬遠した。

  国家のあり方や経済、主要候補にうんざりしている米国民が増えており、そのような有権者の態度は、少なくともレースの結果を左右することになるだろう。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:American Voters Tired of Biden and Trump Dread Election Deja Vu (1)(抜粋)

 

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