【図解】刑事裁判で執行猶予がつくケースとは

刑事裁判で有罪判決を受けても、執行猶予がつけば、一定期間は刑の執行が猶予されます。新たな犯罪をすることなどなく無事に猶予期間が経過すれば、刑の言渡しは効力を失い、刑罰を受けなくてもよいことになります。 前科がある場合でも、一定の条件を満たす場合には、執行猶予がつく可能性があります。 この記事では、執行猶予がつく条件や、前科があっても執行猶予がつくのはどのような場合なのかといった点について詳しく解説します。

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目次

  1. 執行猶予とは
  2. 前科があっても執行猶予がつくのはどのような場合か
  3. 前科が死刑・懲役・禁錮にあたるか
  4. 前科に執行猶予がついていたか
  5. 前科に保護観察がついていたか
  6. 執行猶予の可能性があるか弁護人に相談する

執行猶予とは

執行猶予は、刑事裁判で有罪と判断されて刑が決められたけれど、一定の期間、刑の執行を猶予する制度です。 執行猶予の期間中に再び犯罪にあたる行為をして有罪とされ、その刑についての執行猶予がなかった場合など、一定の事情がある場合には執行猶予が取り消されます。執行猶予が取り消されると、刑を受けることになります。 執行猶予が取り消されずに期間が経過すると、刑の言渡しの効力がなくなり、刑を受けないことになります。 執行猶予をつけることができるのは、裁判官が決めた刑が一定の年数(懲役刑などの場合)や、金額(罰金刑の場合)より少なかった場合で、かつ、犯罪に至った事情(情状)を考慮して裁判官が執行猶予をつけた方がよいと判断した場合です。 このように、執行猶予をつけるかどうかは情状により異なるので、必ずしも執行猶予がつくとは限りません。 執行猶予となった場合、刑が猶予される期間は1年〜5年です。

前科があっても執行猶予がつくのはどのような場合か

前科があると、執行猶予をつけてはならないケースがあります。前科があっても裁判官が執行猶予をつけてもよいのは、さまざまな条件をクリアした場合です。条件が複雑なので、フローチャートにして解説します。 フローチャート:前科があっても執行猶予がつくかどうか ポイントになるのは主に次の点です。それぞれ解説していきます。

  • 前科の内容
  • 前回の執行猶予や保護観察の状況
  • 今回の刑の重さ など

上記のフローチャートに沿って説明します。

前科が死刑・懲役・禁錮にあたるか

まず、前科に関する条件です。 判決言渡しの前に、死刑・懲役・禁錮の刑に処せられたことがあるかで分かれます。 「処せられた」とは、死刑・懲役・禁錮の刑に処するという内容の判決の言渡しを受けて、その判決が確定したことをいいます。その刑に執行猶予がついていた場合も「処せられた」に含まれます。 ただし、次のような場合には、「死刑・懲役・禁錮の刑に処せられた」とはいえません。

  • 執行猶予の期間が経過して判決言渡しの効力が失われたとき
  • 刑の免除を受けたあと時間が経過して判決言渡しの効力が失われたとき
  • 恩赦により死刑・懲役・禁錮の刑が軽くなり罰金・拘留・科料となったとき

判決言渡しの前に、死刑・懲役・禁錮の刑に処せられたことがない場合には、さらに次の条件を満たすと、執行猶予の可能性があります。

  • 今回言い渡される刑の重さが3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金にあたる
  • 情状がある

逆に、判決言渡しの前に、死刑・懲役・禁錮の刑に処せられたことがある場合には、次の質問へ進みます。

前科に執行猶予がついていたか

次は、前科の執行猶予についてです。 前科に執行猶予がついていない、または、執行猶予がついていたけれど今回の判決言渡しの時点で期間が終わっている場合には、さらに次の条件を満たすと、執行猶予の可能性があります。

  • 前科の刑の執行を終えた日または刑の執行を免除された日から5年以内に死刑・懲役・禁錮の刑に処せられたことがない
  • 今回言い渡される刑の重さが3年以下の懲役・禁錮または50万円以下の罰金にあたる
  • 情状がある

前科に執行猶予がついていて、判決言渡しの時点で執行猶予の期間中の場合には、次の質問へ進みます。

前科に保護観察がついていたか

次は、前科の執行猶予に保護観察がついていたかどうかです。 前科の執行猶予に保護観察はついていなかった、または、保護観察はついていたけれど今回の判決言渡しの時点でその期間が終わっている場合には、さらに次の条件を満たすと、執行猶予の可能性があります。

  • 今回の刑が1年以下の懲役・禁錮にあたる
  • 情状に特に酌量すべきものがある

前科の執行猶予に保護観察がついていて、今回の判決言渡しの時点で保護観察の期間中の場合には、執行猶予の可能性はありません。

執行猶予の可能性があるか弁護人に相談する

執行猶予となるには、今回の刑の重さや、情状があるという条件を満たす必要があります。 刑の重さは、一律に決まっているわけではなく、犯罪の内容や、被害状況、謝罪や示談をしたかなどにより異なります。 情状とは、犯罪に至った事情(動機など)や犯行後の事情(反省・謝罪など)をいいます。 情状があると裁判所に認めてもらうには、情状があることを裁判で主張して、証拠を提出して証明しなければなりません。 たとえば、反省文や被害者への手紙を証拠として提出したり、家族や職場の上司などに証人として来てもらい社会復帰の支援を約束してもらったりすることがあります。 刑の重さや情状の見通し、執行猶予の可能性がどの程度あるのか、執行猶予のためにどのような活動をすればよいかなど、刑事裁判の前に弁護人に相談しましょう。

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