国連のガザ支援機関、「極めて切迫した」状況 日本なども資金拠出ストップ

UNRWAがガザ地区で提供する小麦粉を運ぶ人たち(ガザ南部ラファ、28日)

画像提供, EPA

画像説明, UNRWAはガザ地区で小麦粉を提供するなどをしている(28日、ガザ南部ラファ)

国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)の一部職員が、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃に関与したとされる問題で、UNRWAへの資金拠出を停止する国が増えており、危機がいっそう深まっている。

UNRWAはパレスチナ自治区ガザ地区で活動する最大の国連機関。29日までに新たに日本とオーストリアが、資金拠出の停止を発表した。すでにアメリカ、イギリス、ドイツ、イタリアが拠出を一時的に止めている。

UNRWAはBBCに、「極めて切迫した」状況だと話し、「ガザにおける人道支援の必要性は刻一刻と高まっている」と強調。各国が資金拠出を再開しなければ、2月末以降は活動を続けられなくなるだろうと広報担当者は述べた。

日本の外務省は28日夜、資金拠出の停止を決めたと発表。「イスラエルへのテロ攻撃にUNRWA職員が関与したとの疑惑について、極めて憂慮している」とした。そのうえでUNRWAに対し、「迅速かつ完全な形で」調査を実施するよう「強く求めている」とした。

UNRWAの2022年の統計によると、日本は資金拠出額が6番目に多い。

一方、オーストリアも29日、こうした動きに続くと表明。「疑惑に関して包括的で迅速かつ完全な調査」を求めるとした。

UNRWAへの資金拠出

UNRWAのジュリエット・トーマ報道官はBBCに、疑惑は「極めて深刻」で、ラザリーニ事務局長が問題の職員の即時解雇という「異例の措置」をとったと説明。さらに、「極めて切迫した状況だ。ガザにおける人道支援の必要性が刻一刻と高まっているときに、このような事態になった」と述べた。

「住民が住む場所を失う状況は続き、大勢が飢えている。飢餓が急速に近づいている」とも、報道官は強調し、「私たちは全力で飢餓の回避に努めている。しかし少なくとも10の大口支援国が資金拠出を一時停止し、資金不足に直面している。現在ガザで行われている最大の人道支援活動に、非常に深刻な影響が及ぶ」と懸念を示した。

トーマ報道官はまた、疑惑に関してはUNRWAは証拠を確認していないが、国連本部の内部監査室が調査中だとした。

<関連記事>

UNRWAはハマスによるイスラエル襲撃に関わったとされる職員を、何人か解雇している。この襲撃では、ハマス戦闘員らが民間人を主体に約1200人を殺害し、250人近くを人質としてガザに連れ去った。

報復としてイスラエルは大規模な軍事作戦を開始。ハマスが運営するガザ保健当局によると、これまでに2万6000人以上が殺され、そのほとんどが女性と子どもだという。また、約170万人が自宅を離れており、その多くはUNRWAの施設に避難しているという。

多数のUNRWA職員が関与=イスラエル

米紙ニューヨーク・タイムズによると、イスラエル情報機関がまとめた文書には、UNRWAの職員の約200人がハマスや武装組織イスラム聖戦の工作員だと、詳しい証拠を示さずに書いてある。

また、イスラエルの資料には、少なくとも12人の職員が昨年10月7日にイスラエルに入ったと書かれているという。UNRWAは、このうち9人を解雇し、調査を続けているとしている。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルも、同じ文書について、ガザのUNRWA職員1万2000人のうち約1200人がハマスやイスラム聖戦とつながりがあるとしていると報じた。

<関連記事>

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は29日、UNRWAについて「ハマスとつながっている」、「10月7日の大虐殺に直接または間接的に加わったUNRWA職員が13人いたことがわかった」と英メディア・トークTVのインタビューで発言した。「その者たちはUNRWAの学校で、イスラエル絶滅の教義、テロの教義を教え、テロを賛美し、テロを称賛してきた」と述べ、政府文書の内容を裏付ける形の主張を重ねた。

イスラエルのイスラエル・カッツ外相は同日、UNRWAのラザリーニ事務局長との会談をキャンセルし、辞任を求めたと明らかにした。

UNRWA全体を罰すべきでは……国連事務総長

アントニオ・グテーレス国連事務総長はこれに先立ち、28日に声明を発表。UNRWAが非難されている内容は「とんでもない」ことだとした。その一方、資金拠出国に対し、「UNRWAの活動の継続を保証する」よう訴えた。

グテーレス氏はまた、「関与したとされる12人のうち、9人はUNRWAのフィリップ・ラザリーニ事務局長によって直ちに身元が確認され解雇された。1人は死亡が確認され、別の2人は身元が明らかになりつつある」とした。

そして、この疑惑を理由に「人道活動職員として最も危険な地域のひとつで働く大勢を含め、UNRWAのために働く何万人もの人に、罰を与えるべきではない」とも呼びかけた。

<関連記事>

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は29日、UNRWA職員に関する報告について、「とても憂慮」しているとコメント。UNRWAが責任の追及と見直しのために調査することが「不可欠」だと述べた。

ブリンケン氏は同時に、「ガザで支援を切実に必要としている男性、女性、子どもたちが実際に支援を受けるうえで、UNRWAは絶対に欠かせない役割を担っている」と発言。ガザ住民支援においてUNRWAが担ってきた役割を果たせる存在は、短期的には誰もいないとして、UNRWAが役割を果たし続けることが必要だと付け加えた。