イタリア総選挙、極右政党が勝利

ポール・カービー、BBCニュース(ローマ)

Leader of Brothers of Italy Giorgia Meloni holds a sign at the party's election night headquarters

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画像説明, 政党「イタリアの同胞(FDI)」を率いるメローニ氏は、国民は明確に右派運動を支持したと選挙結果を歓迎している

イタリアで25日、上下両院の総選挙が行われ、極右政党を率いるジョルジャ・メローニ党首がイタリア初の女性首相に就任する見通しとなっている。メローニ氏は同日夜、勝利を宣言した。

メローニ氏は新首相として、第2次世界大戦後のイタリアで最も右派に傾斜した連立政権を樹立すると予想されており、欧州3位の経済規模の国による右傾化を他の欧州諸国は警戒している。

ただし、投票締め切り後にメローニ党首は、自ら率いる「イタリアの同胞(FDI)」は「全員のために国を治める」と述べ、有権者の信頼を裏切りはしないと述べた。

メローニ氏は首都ローマで記者団に対し、「イタリア人は、『イタリアの同胞』が率いる右派政権を支持すると、明確なメッセージを発した」と述べた。

開票速報によると、FDIの得票率は22~26%になる見通し。中道左派・民主党のエンリコ・レッタ党首を抑えて、メローニ氏率いる右派連合が上院で計42.2%を得票し、両院で過半数を得るものと予想されている。

右派連合には、極右政党「同盟」と中道右派政党「フォルツァ・イタリア」が加わっている。

ただし、イタリアの新首相を決めるのは、大統領で、第一党の党首ではない。大統領による首相指名には時間がかかる。

Italy election
Presentational white space

メローニ氏はこのところ、ウクライナ支持を強調したり、欧州連合(EU)批判を和らげたりと、自分は極右ではなく穏健派だとイメージチェンジを図ってきた。ただし、かつての独裁者ベニート・ムッソリーニを支持したファシストの戦後運動に根差す政党を率いていることに変わりはない。

今年6月にはスペインの極右政党「VOX(声)」に向けた激しい演説で、自分にとっての優先事項を列挙。「自然な家族に賛成、LGBTロビーに反対、性的アイデンティティーに賛成、ジェンダー思想に反対(中略)イスラム主義暴力に反対、強固な国境に賛成、大量移民に反対(中略)大きい国際金融機関に反対、ブリュッセルの官僚に反対!」と述べた。

中道左派連合の得票率は計26%未満の見通しで、右派に大きく後れを取っている。民主党のデボラ・セラッキアーニ氏は、イタリアにとって悲しい夜だと述べつつ、右派は「議会で多数を得たものの、国全体ではそうではない」と強調した。

イタリアでは今年7月、左右両派の連立による挙国一致のマリオ・ドラギ内閣が発足から1年半で崩壊。左派は有力な連立態勢を組むことができず、今回の投票前から勢いに欠けていた。ジュセッペ・コンテ氏率いる「五つ星運動」は投票率3位になる見通しで、中道左派的な政策を掲げるものの、レッタ氏率いる民主党とは立場を異にしている。

投票率は63.82%と劇的に低く、内務省によると2018年の前回総選挙から10ポイント近く下がった。投票率はシチリアを含む南部で特に低かった。

イタリアはEU創設時からの加盟国で、北大西洋条約機構(NATO)加盟国でもある。一方、メローニ氏の物言いは、ハンガリーを率いるナショナリストのオルバン・ヴィクトル首相に近い。

イタリア政界でメローニ氏を支持する、極右「同盟」のマッテオ・サルヴィーニ党首や、中道右派「フォルツァ・イタリア」のシルヴィオ・ベルルスコーニ元首相(85)は、どちらもロシアと深い関係を築いてきた。

ベルルスコーニ氏は先週、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領について、ウクライナ侵攻をせざるを得なかった、プーチン氏は追い込まれたのだと同情的な発言をしていた。サルヴィーニ氏は、西側諸国による対ロ制裁を疑問視する発言をしている。

イタリア政府はこれまで、新型コロナウイルスのパンデミック対策のためイタリアがEUから受け取った計約2000億ユーロの補助金と融資と引き換えに、さまざまな国内改革をEUに約束した。これについてメローニ氏は、エネルギー危機で状況は変わったとして、改革の履行を再検討する姿勢を示している。

People stand next to a poster of Enrico Letta, secretary of the centre-left Democratic Party (PD), at the PD headquarters, during the snap election, in Rome, Italy, September 25, 2022

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画像説明, 右派に敗れたレッタ氏率いる民主党本部(25日夜、ローマ)

ハンガリーのオルバン首相の政治顧問を長年務めるオルバン・バラシュ氏は、「欧州の課題について我々と同じビジョンと姿勢を共有する友人が、今まで以上に必要だ」として、イタリアの右派各党の勝利をすぐに歓迎した。

フランスでは、極右「国民連合」のジョルダン・バルデラ氏が、イタリアの有権者は欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長に対して、もっと謙虚になるよう𠮟りつけたのだと話した。

フォン・デア・ライエン委員長はイタリアの選挙に先立ち、もしイタリアが「別の方向」へ向かうようなら、欧州には対応するための「道具」が備わっていると発言していた。

他方、ローマのサピエンツァ大学のジャンルーカ・パッサレッリ教授はBBCに対して、メローニ氏は欧州についてあまり事を荒立てず、他の政策に集中するだろうと述べた。

「今までより公民権が制限され、LGBTや移民についても締め付けが厳しくなると思う」

極右政党「同盟」のサルヴィーニ党首は内相として復帰し、リビアからの移民船の受け入れを差し止めたい考えとみられている。

イタリアでは2020年の国民投票の結果、国会議員の定数が上下両院合わせて約3割、削減された。この議員数削減は、今回勝利した右派に有利に働いたものとみられる。

RAIの出口調査によると、右派3党は下院400議席のうち227~257議席、上院200議席のうち111~131議席を得る見通し。サルヴィーニ氏は、右派が両院で優勢なのは明確だと指摘した。

同じ出口調査によると、中道左派は下院で78~98議席、上院で33~53議席にとどまる見通しで、メローニ氏が率いる右派連合が圧倒的な力を持つことが予想される。