イギリスで主要閣僚2人が辞任、首相を信頼できずと ジョンソン政権に大きな打撃

Javid, Sunak, Johnson in Downing st

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画像説明, ジョンソン首相(右)の後を歩くジャヴィド保健相(左)とスーナク財務相

イギリスのリシ・スーナク財務相とサジド・ジャヴィド保健相が5日、辞職した。国を率いるボリス・ジョンソン首相に信頼を置けなくなったとした。

両閣僚は、ジョンソン氏がこの日、クリス・ピンチャー議員を2月に与党・保守党の院内副幹事長に任命したことについて謝罪した直後に辞任した。同議員は、会員制クラブで男性2人に痴漢行為をしたと報じられ、先月末に院内副幹事長を辞任していた

ジャヴィド氏は、政府が「国益のために行動していない」と、辞任の理由を説明。

スーナク氏は、ジョンソン氏をこれ以上支持できないとし、両者の違いが大き過ぎることを示唆した。

ジョンソン氏は先月上旬、保守党の信任投票にかけられ、党首と首相の座を追われる危機を乗り越えたばかり。今回の閣僚らの相次ぐ辞任で、また新たな危機を迎えた。

党首信任投票でジョンソン氏は59%の信任票を得た。そのため、現行の制度だと、来年6月までは次の信任投票は行われず、党首を辞めさせられることはない。

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しかしジョンソン政権は、新型コロナウイルスが大流行していた時期に首相官邸などで「飲み会」が開かれていた「パーティーゲート」問題などで、世論の厳しい批判を浴びている。ジョンソン氏は、パーティーゲートに絡んで警察に罰金を科され、法律違反で処罰されたイギリス初の現職首相となった。

これらを受け、首相の辞任を求める声が保守党内からも出ている。また、増税や生活費上昇への対応や政策に異論を唱える保守党議員もいる。

2閣僚は辞表を公開

ジャヴィド氏は5日午後6時過ぎ、ツイッターで辞表を公開した

2021年6月から保健相を務めてきた同氏は、「この政府で良心的に仕え続けることは、もはやできない」と説明。

「私は本能的にチームプレーヤーだが、英国民も当然、政府に対して誠実さを求めている」、「あなた(ジョンソン氏)がリーダーとして設定した姿勢と、あなたが示す価値観は、あなたの同僚、あなたの党、そして最終的には国に反映される」とした。

その数分後の午後6時10分ごろ、将来の保守党党首とも目されるスーナク氏も、辞表をツイッターに投稿した

国民は政府に「適切に、有能に、真剣に」政治が行われることを期待しているが、政府の道徳規範は、「打倒する価値がある」ほどに低下していると主張した。

Rishi Sunak's resignation letter

画像提供, Rishi Sunak

画像説明, スーナク氏の辞表
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スーナク氏は2020年2月の就任以来、経済政策などで必ずしもジョンソン氏に同調してこなかった。だが、辞表では、「私はあなたに忠実だった」、「あなたが党首になれるよう支え、他の人にもそうするよう呼びかけた」、「あなたが私に国の経済と財政の管理を任せてくれたことに感謝しながら、閣僚を務めてきた」と説明。

しかし、「経済に関する来週の共同演説を準備する中で、私たちアプローチが根本的に大きく違うことが明らかになった」、「政権を去るのは悲しいが、このまま続けるわけにはいかないという結論に、不本意ながら至った」とした。

政府役職を辞任する議員らも

閣僚2人が辞任する直前、ジョンソン氏はBBCのインタビューで、ピンチャー氏を保守党の院内副幹事長に任命したことについて、「悪い間違い」を犯したと認めた。任命時にはピンチャー氏の痴漢行為に関する疑惑を認識していたとした。

ジョンソン氏は、「いま思えば、あれは間違いだった。この件で大きな影響を受けたすべての人に謝罪する」と述べた。

両閣僚に加え、保守党のビム・アフォラミ副議長がテレビの生中継で辞任を発表。アンドリュー・マリソン議員は貿易特使を辞めた。ジョナサン・ガリス議員とサキブ・バティ議員も共に内閣補佐官を辞任した。

法務長官を支えるアレックス・チョーク法務次官も辞任を表明した。ツイッターに投稿した辞表では、規則違反のロビー活動で辞任した保守党議員やパーティゲート、さらには今回のピンチャー氏の保守党幹部辞任などへの対応を通じて、政府は国民の信頼を回復不能なまでに崩壊させたと主張。「擁護できないものを擁護」することは不可能だとした。

一方、リズ・トラス外相、マイケル・ゴーヴ・レベリングアップ相など閣僚の一部は、首相が今回の反政権の動き影響を見極める間、首相への支持を続けるとみられる。

ナディーン・ドリス文化相やジェイコブ・リース=モグ・ブレグジット機会相は、ジョンソン氏への強い支持を鮮明にしている。

スーナク氏とジャヴィド氏の辞任を受け、財務相にはナディム・ザハウィ教育相が任命された。保健相には、ジョンソン氏の首席補佐官、スティーヴ・バークリー氏が就任する。

教育相には、ミシェル・ドネラン大学担当閣外相が昇格した。

野党は解散総選挙を要求

最大野党・労働党のサー・キア・スターマー党首は、解散総選挙を歓迎するとし、政権交代が必要だと述べた。

「あらゆる不正、あらゆる失敗を経て、この保守党政権が崩壊していることは明らかだ」

野党・自由民主党のサー・エド・デイヴィー党首も、「混迷の政府が私たちの国を破綻させた」として、首相の退陣を要求。

スコットランド国民党(SNP)党首を務めるスコットランド自治政府のニコラ・スタージョン第一首相は、ジョンソン政権の「腐った連中」は全員去るべきだとし、閣僚が「国民に嘘をついている」と非難した。

次の総選挙は2024年に実施の見通し。ただ、ジョンソン氏が議会の解散権を行使し、時期を早めることは可能だ。

動画説明, 「この話題を終わらせ、仕事に取り掛かる」……ジョンソン英首相にとっての信任投票勝利とは