【米大統領選2020】 「不正証拠ない」と調査委 アリゾナ州とジョージア州もバイデン氏に

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米連邦選挙当局は12日、今回の大統領選は「アメリカ史上最も安全」な選挙だったとの調査結果を発表し、不正があったとするドナルド・トランプ米大統領(74)の主張を否定した。13日未明には、開票の続いていたアリゾナ州で、同日午後にはジョージア州でもジョー・バイデン次期大統領が勝つ見通しとなった。同日午前には中国政府も、バイデン氏に祝意を伝えた。

アリゾナ州の選挙人11人とジョージア州の16人を加え、バイデン氏がこれまでに獲得した選挙人は、計306人に達した見通し。大統領に当選するには過半数270人以上が必要。大統領選で民主党候補がアリゾナ州で勝つのは、1996年にビル・クリントン氏が勝って以来、初めて。ジョージア州では1992年以来。

ノースカロライナ州ではトランプ氏が勝つ見通し。これで全米50州の大勢が判明したことになる。

全国での得票数では、バイデン氏が500万票以上リードしている。

ジョージア州では再集計が行われるが、州選管は情勢が変わる見通しはないとしている。ペンシルヴェニア州では、再集計は実施しないと州務長官が発表。同州の開票率99%でバイデン氏は6万票以上リードしている。

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バイデン氏はこれで、前回大統領選で民主党が落としたペンシルヴェニア、ミシガン、ウィスコンシン、アリゾナ、ジョージアの各州を奪還する見通し。

アリゾナ州は長年、共和党重鎮で2008年の大統領候補だった故ジョン・マケイン上院議員の地元だった。上院議員同士だったバイデン氏とマケイン氏の党派を超えた友情は有名で、今回の選挙ではマケイン夫人がトランプ氏ではなくバイデン氏支持を表明していた。トランプ氏はマケイン氏とたびたび対立し、葬儀にも遺族の意向を受けて欠席したとされている。

アリゾナ州で民主党の大統領候補が勝つのは1996年のクリントン氏以来。それ以前に民主党の大統領候補が同州で勝ったのは、1948年のハリー・トルーマン副大統領(当時)だった。

ジョージア州は今年7月に80歳で亡くなった公民権運動の闘士、ジョン・ルイス下院議員(民主党)の地元。トランプ氏は2017年1月にルイス議員を「口先だけ」と攻撃し、大勢の非難を浴びた。同州でのバイデン氏勝利には、2018年の州知事選に僅差で敗れたステイシー・エイブラムス氏(同)が中心となり、大々的な有権者登録運動を推進したことも大きく影響したと言われている。

選挙人(計538人)は人口などに応じて、州ごとに割り振られる。両候補が州ごとに獲得した選挙人が、12月14日に自分の州が選んだ候補に投票することで、大統領選の結果は最終確定する。

これまで選挙結果にコメントを控えていた中国政府も同日、バイデン氏に祝意を伝えた。外務省の汪文斌報道官は、「アメリカの人々の選択を尊重する」、「バイデン氏とハリス氏におめでとうと申し上げる」とコメントした。ロシア政府は「公式結果」を待つとしている。

政府調査委が「不正なし」と

米大統領選をめぐる調査は、米国土安全保障省のサイバーセキュリティー・インフラセキュリティー庁(CISA)の調査委員会が行ったもの。

「投票システムが票を削除したり、紛失したり、変更を加えたり、あるいは何らかの方法で不正アクセスを受けたといった証拠はない」と、同委員会は発表した。

トランプ大統領は先週、自分が獲得するはずの270万票が「消された」と、証拠を示さずに主張していた。

トランプ氏は大統領選で当選確実となった野党・民主党のジョー・バイデン氏(77)への敗北をいまだ認めていない。

動画説明, 【米大統領選2020】 これはアメリカの民主主義にとって危機なのか

3日の大統領選でアメリカの投票システムの保護に取り組んだCISAは12日、共同声明を発表した。

CISAの調査委員会は「選挙プロセスについて、根拠のない主張や偽情報が多数あることは承知しているが、我々は選挙の安全性と完全性に最大限の自信を持っていると断言できる。あなた方もそう断言できるはずだ」と述べた。

「質問があれば、選挙を管理する信頼できる機関である、選挙当局に問い合わせてもらいたい」

ロイター通信によると、CISAのクリストファー・クレブス長官は自らについて、トランプ政権に解任されるだろうと述べたという。

選挙をめぐる偽情報を暴くCISAのウェブサイト「うわさコントロール」(Rumor Control)をめぐり、クレブス氏がホワイトハウスの怒りを買ったと、同通信は伝えた。

クレブス氏は12日、選挙法の専門家のツイートをシェアした。専門家のツイートには「投票機に関するとっぴで根拠のない主張は、たとえ大統領の発言であったとしてもリツイートしないでください」と書かれてあった。

CISAのアシスタントディレクター、ブライアン・ウェア氏は12日に辞任した。ホワイトハウスは今週初めにウェア氏に辞任を求めていたと、ロイター通信は報じている。

共和党の反応は?

トランプ氏は12日、28州で使用されている投票ソフトウェアが自分が獲得するはずの数百万票を削除したとツイートした。ただ、この驚くべき主張を裏付ける証拠は示さなかった。

次期大統領のバイデン氏が機密情報にアクセスできない状況が続く中、同氏に機密情報のブリーフィングを行うことを支持する声が、共和党議員らの中でも少数ながら高まっている。

一部の共和党議員らは、次期大統領に通常与えられるはずの機密メモをバイデン氏に渡すべきだとしている。トランプ氏を強力に支持する共和党重鎮、上院司法委員会のリンジー・グレアム委員長も同様の声を上げているという。

しかしほとんどの共和党議員は大統領選でのバイデン氏の勝利は認めず、トランプ氏を支持している。

共和党の上下院議員はトランプ氏の基盤を保つことなど、多くのことを念頭においている。トランプ氏はバイデン氏に敗れる中、現職大統領として最も多くの票を獲得した。

トランプ氏に敵対すれば、代償を伴う反発が起きる可能性がある。特に上院をめぐっては、来年1月にジョージア州の2議席について決選投票が行われ、与野党どちらが上院をコントロールするかが決まるからだ。

Lindsey Graham

画像提供, Reuters

画像説明, 共和党重鎮、上院司法委員会のリンジー・グレアム委員長もバイデン氏へのブリーフィングを支持しているが、今もトランプ氏の側近だ

トランプ氏が友人に対し、保守派の米フォックス・ニュースを弱体化させるためのデジタルメディア会社を立ち上げたいと述べていたとの報道もある。トランプ氏はフォックス・ニュースからの全面的な支持をもう受けられないと感じているという。

BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、トランプ氏は2024年の大統領選に出馬し、大統領の座を奪還する可能性についても公然と話し始めているという。

バイデン氏は何を?

こうした中、バイデン氏は12日、ローマ教皇フランシスコと電話会談した。また、民主党の指導者と新型コロナウイルス対策の景気刺激策の必要性について話し合った。

バイデン氏はこの日、デラウェア州ウィルミントンで自身の政権移行チームと一緒に過ごした。