トランプ大統領、新型ウイルスの発生源めぐり情報機関と意見相違

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画像提供, EPA

新型コロナウイルスの発生源について、ドナルド・トランプ米大統領とアメリカの情報機関の意見が食い違っている。トランプ大統領は、新型ウイルスが中国の研究所から発生したという証拠を情報機関から得たと発言。一方、アメリカの情報機関をまとめる国家情報長官室(ODNI)は異例の声明を発表し、ウイルスの出所についてはなお調査中だと釘を刺した。

中国は研究所説を否定しており、アメリカのCOVID-19対応を批判している。

新型ウイルスは昨年12月に中国湖北省武漢で最初に確認された。これまでに全世界で少なくとも320万人が感染し、約23万人が亡くなっている。

アメリカの感染者は100万人超、死者は6万3000人に上っている。

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トランプ氏の発言

トランプ大統領は4月30日、記者から「現時点で、新型ウイルスの発生源が武漢ウイルス研究所だと確信を得るものを見たか」と質問された。

これに対して大統領は「ああ、見た」と答えたものの、詳細は明かさなかった。一方で、「世界保健機関(WHO)は中国の広報期間のように振る舞っていることを恥じるべきだ」と述べた。

自分の発言について詳細を求められると、トランプ氏は「それは教えられない。教えることが許されてない」と話した。

その上で、「中国は間違いをおかしたのか、最初は間違いでさらに間違いを重ねたのか、誰かが故意にやったことなのか?」と続けた。

「中国では、人や交通機関が中国に入るのは禁止されたのに、他の国に行くことは許されていた。ひどいことだ。答えに困る問題だろう」

米紙ニューヨーク・タイムズはこの日、ホワイトハウス高官がアメリカの情報機関に対し、新型ウイルスが武漢の研究所に由来するかを調べるよう命じていると報じた。

NBCニュースが報じた関係筋の話によると、情報機関はWHOと中国がウイルスの情報を隠していたかどうかを調べるよう命じられているという。

情報機関の声明は何と?

これに対しODNIは、「情報機関は引き続き最新の情報を精査し、このアウトブレイク(大流行)がウイルスを保有している動物由来なのか、武漢の研究所で起きた事故の結果なのかを見極めていく」とする声明を発表。

その中で、COVID-19は自然由来の病気だというのが「科学者間の広い合意」で、ウイルスは「人工、あるいは遺伝子操作されたものではない」としている。

アメリカの情報機関が、新型ウイルスが生物兵器だという陰謀論を明確に否定したのはこれが初めてとなる。

トランプ氏の中国批判が加速

トランプ大統領は最近、中国のパンデミック対応への非難を強めている。4月29日には、中国が2020年の米大統領選で自分を負けさせたいのだと発言した。

また、中国当局が新型ウイルスの存在を当初は隠していた、COVID-19の感染拡大を食い止められるはずだったと批判している。

トランプ氏はWHOに対しても批判を重ねており、資金拠出を停止している。

これに対し中国の外務省は、トランプ政権が自分たちの危機対応のまずさから国民の目をそらさせようとしていると指摘。

さらに中国は、COVID-19はアメリカが発生源だという主張を繰り返している。この主張についての証拠はない。

米紙ワシントン・ポストによると、トランプ政権は中国への経済制裁を計画しており、賠償をめぐる提訴などを検討しているという。

トランプ氏と情報機関、以前にも衝突

トランプ氏は今年1月、アメリカの情報機関はイランについて「甘い」と発言。北朝鮮による脅威の評価も一蹴している。

また、2016年の大統領選でも情報機関を攻撃しており、ロシアが選挙活動に介入していたという情報機関報告を疑問視した。

ロシア疑惑をめぐっては、米司法省が2018年2月にロシア人13人とロシア企業3社を正式起訴しているが、トランプ氏はロシアがサイバー攻撃やフェイクニュースの拡散で投票結果に影響を与えようとしていたという批判を繰り返し否定している。