クシュナー米大統領上級顧問、最高レベルの機密取扱権限を失う

White House Senior Advisor Jared Kushner talks on his cell phone

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画像説明, クシュナー上級顧問は、大統領に毎日届けられる最高レベルの機密報告「大統領日報(PDB)」を閲覧できなくなる

ドナルド・トランプ米大統領の娘婿で大統領上級顧問のジャレッド・クシュナー氏(37)が、最高レベルの機密情報を取り扱える権限を失った。複数のメディアが27日、伝えた。クシュナー氏はこれまで権限を申請中の状態で、大統領に毎日届けられる最高レベルの機密報告などを扱っていた。

米政治ニュースサイト「ポリティコ」はクシュナー氏が、連邦捜査局(FBI)による身元調査の結果、最高レベルの機密取扱権限は認められないと米身元調査局から23日の時点で連絡を受けていたと伝えた。クシュナー氏の担当弁護士、アビー・ローウェル氏が認めたという。ローウェル弁護士は、「大統領に与えられた非常に重要な職務をこなすためのクシュナー氏の能力には影響ない」と話している。

ロイター通信は、2人の匿名消息筋の話としてこれを確認した。

ジョン・ケリー首席補佐官は今月初め、重要機密を閲覧できるホワイトハウス職員の範囲を厳しく限定していくと発言していた。

ホワイトハウス職員の機密取扱権限については、今月初めに家庭内暴力疑惑で辞任した秘書官が、FBI調査の結果、権限を認められていなかったと報道されていた。辞任したロブ・ポーター秘書官はクシュナー氏とハーバード大学で同級生だった。

今月半ばの報道によると、その時点でロッド・ローゼンスタイン司法副長官がホワイトハウスに、クシュナー氏の権限承認はさらに遅れると連絡していた。ローゼンスタイン副長官は、大統領選とロシアの介入疑惑に関する特別検察官捜査の責任者。

ダン・コーツ米国家情報長官は13日、上院情報委員会で証言し、トランプ政権で複数の大統領側近が正式な機密取扱権限を与えられていないまま機密を扱っていると懸念を表していた。

クシュナー氏について懸念

クシュナー氏の機密取扱権限に関する報道に先立ち、同氏の報道担当、ジョシュ・ラファエル氏の辞任が明らかになった。

さらに米紙ワシントンポストは、クシュナー氏と外交要人との関係が、ホワイトハウス内で問題視されていると報じた。これについて機密情報を知る立場にいる複数の現・元米情報関係者の話として、同紙はアラブ首長国連邦(UAE)、中国、イスラエル、メキシコの各国政府関係者が内々に、クシュナー氏をどうすれば自分たちに都合よく扱えるかを検討していたと伝えている。

不動産開発業の資産家でもあるクシュナー氏は、トランプ氏の長女イバンカ大統領補佐官の夫。大統領選では、トランプ陣営で中心的な役割を担った。政治外交経験のないままトランプ政権に入り、中東和平やメキシコ関係などを担当するようになった。

機密取扱権限を最初に申請した際の記入漏れが多く、再申請を求められるなど、手続きに時間がかかったものの、正式な権限を得ていない状態で、トランプ氏に提出される最高機密を閲覧できる状態にあった。

米身元調査局の責任者は昨年10月、連邦議会に対して、機密取扱許可申請で「これほどのレベルのミスは見たことがなかった」と話していた。

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<解説> 羽根を切られ――アンソニー・ザーカーBBCニュース、ワシントン

ワシントンポストによると、国家安全保障会議(NSC)に出席しないホワイトハウス職員として、クシュナー氏ほど各情報機関から情報を求め続けた人物はいない。そのクシュナー氏が今回、羽根を切られた。少なくとも当面は。

政権は、それでもクシュナー氏は幅広い職務をこなすことができると主張するかもしれない。タントウノアビー・ローウェル弁護士も、これは通常の手続きで懸念はないと言うかもしれない。しかし実際にはこれは、大統領の娘婿にとってこれは恥ずかしい展開だ。大統領日報(PDB)をもう見ることができないし、外国要人と接触するにしても、先方の利害や行動について最もデリケートな情報を得ていない状態で交渉に臨むことになる。

しかしホワイトハウスにとってこの問題は、クシュナー氏だけのことにとどまらない可能性がある。米NBCニュースによると、昨年11月の時点で職員130人以上が仮の機密取扱権限しか得ていない状態で働いていた。このなかには、イバンカ氏やドン・マギャン法律顧問も含まれる。

機密取扱権限が格下げされたことが明らかになったのは、クシュナー氏が最初で、最も影響力の大きい政権関係者かもしれない。しかし、彼が最後ではないかもしれないのだ。

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