「昭和天皇独白録」原本が2500万円で落札 ニューヨーク競売で

「独白録」は昭和天皇の口述を側近らが書き取った記録だ

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画像説明, 「独白録」は昭和天皇の口述を側近たちが書きとめたもの

昭和天皇が第2次世界大戦前と戦中の出来事について側近に語った回想録の原本が6日、ニューヨークで行われた競売で22万ドル(約2470万円)で落札された。落札者は美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長。

「昭和天皇独白録」と呼ばれる回想録は、戦後に米国の要請を受けてまとめられたと考えられている。手書きの記録は、「現人神」とあがめられていた天皇の個人的な戦争責任を回避するため、慎重に書かれたとみられる。

独白録は昭和天皇崩御の翌年、1990年に初めて出版された。

英競売会社ボナムズによって今回、ニューヨークでの競売にかけられた独白録の原本の予想価格は10万~15万ドルだった。

第2次世界大戦後も昭和天皇はその地位にとどまった

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独白録は、戦後間もない1946年に数人の側近が天皇の言葉を書き取ったもので、「連合国軍総司令部のダグラス・マッカーサー最高司令官が、記録するよう促したと思われる」とボナムズは説明している。

競売にかけられた原本は、元外交官で天皇の側近だった寺崎英成氏が手書きで作成。寺崎氏は占領軍とのやり取りで天皇の通訳を務めた。

ボナムズは、2冊にまとめられた原本が天皇が語った内容を完全に記録した唯一のもので、日本の歴史を理解する上での「重要な資料の一つ」と解説した。

昭和天皇は独白録の中で、戦前、戦中の自らの立場について内閣の決定に抗えない状況だったと振り返った。また、開戦に反対すれば破滅的な内乱が起きるだろうと恐れたと語った。

戦前、戦中の意思決定で昭和天皇が果たした役割について、歴史家の意見は分かれている。

戦後開かれた東京裁判で日本の元指導者たちが多数、戦犯として裁かれたものの、昭和天皇は訴追されなかった。その後、日本が復興し経済大国になり、冷戦下で西側の強固な同盟国になる間、天皇であり続けた。