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静岡の墓碑銘2023 豊田章一郎さん/三木卓さん/松本零士さん

 トヨタ自動車を世界的企業に育て上げ、祖父の出身地・湖西市の発展に注力した豊田章一郎、芥川賞を受賞した詩人で作家の三木卓、ともに数々の名作を生み出し、静岡県民と親交があった脚本家の山田太一と漫画家の松本零士-。2023年、各界で確かな足跡を残した静岡県内ゆかりの人々が逝った。

豊田佐吉顕彰祭で胸像に献花する豊田章一郎名誉会長。右は妻の博子さん=2016年10月、湖西市立鷲津中
豊田佐吉顕彰祭で胸像に献花する豊田章一郎名誉会長。右は妻の博子さん=2016年10月、湖西市立鷲津中
三木卓
三木卓
松本零士
松本零士
山田太一
山田太一
森村誠一
森村誠一
藤井直伸
藤井直伸
豊田佐吉顕彰祭で胸像に献花する豊田章一郎名誉会長。右は妻の博子さん=2016年10月、湖西市立鷲津中
三木卓
松本零士
山田太一
森村誠一
藤井直伸

 【経済】トヨタ自動車名誉会長の豊田章一郎(97歳、2・14)は1982年の工販合併で生まれた同社の初代社長に就任し、海外での現地生産を推し進めて「世界のトヨタ」の基盤を確立した。トヨタグループ創始者で自動織機を発明した祖父の豊田佐吉の出身地・湖西市を子どもの頃から訪れ、市が運営する奨学金に多額の私財を寄付して人材育成に力を入れた。市主催で佐吉の命日に開かれる顕彰祭にも2020年まで参列。02年に市から名誉市民章が贈られた。小倉忠一(95歳、4・6)は2003年から県商工会連合会会長を3期9年務め、小規模企業の経営力向上などに尽力。全国商工会連合会副会長も務めた。元県公安委員長の諏訪部敏之(86歳、5・1)は三島商工会議所会頭や県中小企業団体中央会会長を歴任し、中小企業の活性化に寄与した。市川厚(89歳、12・18)は2010年から16年まで沼津商工会議所会頭を務め、沼津駅の高架化を実現する市民の会の会長を担った。TOKAI元会長の藤原明(96歳、11・26)の訃報も届いた。
 【国政】社民党県連顧問で、元社会党参院議員の桜井規順(88歳、11・21)は1989年に初当選し、1期を務めた。満蒙開拓団の関係者でつくる県拓魂奉賛会会長、県中国残留孤児を励ます会代表も務め、自身の経験を踏まえ反戦を訴え続けた。1989年参院選の比例代表に社会党から出馬し初当選した三石久江(96歳、9・26)も旅立った。
 【県政】元県議会議長の大橋正己(83歳、4・23)は1987年に県議に初当選。連続6期当選し、県議会の運営に貢献した。県自転車競技連盟会長として競技振興にも尽力した。
 【地方自治】2008年から焼津市長を1期4年務めた清水泰(79歳、12・7)は東日本大震災を機に津波避難タワー整備や学校耐震化など防災対策を進めたほか、「焼津平和賞」創設など平和発信活動にも取り組んだ。元浅羽町長の村松駿一(86歳、7・8)、元水窪町長の天野勝郎(82歳、6・11)、元春野町長の森下茂(82歳、10・7)、富士市で副市長と収入役を務めた鈴木利幸(80歳、4・8)も永眠した。
 いずれも元熱海市議会議長の渡辺行久(105歳、2・3)、加藤則夫(95歳、2・20)、田中日米露(93歳、10・17)、元浅羽町議会議長の鈴木柳一(99歳、1・12)、元沼津市議会議長の田上博(97歳、4・29)、浜北商工会長なども務めた元浜北市議会議長の坪井敏郎(97歳、8・20)、元小山町議会議長で町観光協会長も担った杉山昭雄(96歳、8・11)、元静岡市議会議長の城内里(87歳、1・7)、元浜松市議会議長の三輪新五郎(86歳、10・30)、元富士宮市議会議長の手嶋皓二(81歳、1・21)、元水窪町議会議長の知久勝宣(81歳、11・28)、元富士市議会議長の前島貞一(78歳、4・29)、元清水町議会議長の渡辺和豊(70歳、10・22)も逝去した。
 【文化】「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎(りんご)たち」など数多くの名作ドラマを手がけた脚本家の山田太一(89歳、11・29)は浜松市出身の映画監督木下恵介(1912~98年)に師事。「木下恵介記念館」(同市中区)を生前何度も訪ね、同館には講演会で木下監督への思いを語ったとの記録が残る。焼津市の小泉八雲顕彰会が主催した2004年の小泉八雲没後100周年事業でも記念講演を行った。「銀河鉄道999」「宇宙戦艦ヤマト」で知られる漫画家の松本零士(85歳、2・13)はスケールの大きなSF、戦争漫画を数多く手がけ、海外のSF映画にも影響を与えた。ディスカバリーパーク焼津天文科学館(焼津市)では1997年のオープンに合わせて名誉館長に就任し、2021年6月まで約24年間にわたって務めた。静岡市出身で、詩人、作家の三木卓(88歳、11・18)は1971年に高見順賞、73年に芥川賞を受賞した。2007年日本芸術院会員。08年から亡くなるまで、本紙で随筆「鎌倉だより」を月1回連載した。作家の森村誠一(90歳、7・24)のベストセラー小説「人間の証明」は映画化された。熱海市に長く執筆拠点を置き、2006~07年に本紙朝刊小説「青春の条件」を連載した。川根本町出身で静岡市に居を構えた現代書家の柿下木冠(83歳、10・4)は1978年県文化奨励賞、84年富嶽文化賞展大賞を受賞し、SBS学苑講師を40年以上にわたって務めた。漫画家のごとう和(71歳、11・30)は1975年にデビュー。代表作「エンジェル日誌」のほか、自身の闘病経験から「ぴんくのハート♡ パーキンソン病と明るく向き合う実録体験記」や静岡空襲体験者らの話を基に反戦の思いを込めた「いのちの水の川」など、命や戦争をテーマに静岡市内で執筆を続けた。浜松市の児童文学作家、那須田稔(92歳、7・11)は「シラカバと少女」で日本児童文学者協会賞などを受賞した。藤枝市の石材店で育った彫刻家の杉村孝(85歳、3・2)は1987年の第6回富嶽文化賞展で大賞。滝ノ谷不動峡(同市瀬戸ノ谷)の岩壁に彫り込んだ高さ10メートルの磨崖仏(まがいぶつ)は観光名所として知られる。静岡市葵区の写真家橋向真(46歳、11・4)は「すごい富士山」と銘打った写真シリーズで交流サイト(SNS)を中心に人気を集めた。神々しい光や躍動感のある雲に包まれた幻想的な風景写真が人々を魅了した。熱海市をついのすみかとした俳優でクレージーキャッツのベーシスト犬塚弘(94歳、死去日不明)の訃報も届いた。
 【まちづくりなど】県警の交通部長や静岡中央署長を歴任した岡村一博(75歳、6・26)は2006年に新設された総務部長に就任し、警視長に昇格。県警退職後は静岡市消防長などを務めた。元三島署長の福井敏彦(74歳、3・9)は県警機動隊長、下田署長、県警警備課長などを担った。元県弁護士会長の土屋連秀(98歳、7・29)は県労働福祉事業協会理事長なども務めた。北朝鮮に拉致された疑いがある浜松市出身の特定失踪者河嶋功一さんの母河嶋愛子さん(90歳、12・1)も帰らぬ人となった。
 【研究・教育・医療】千葉工業大学長で東大名誉教授の松井孝典(77歳、3・22)は森町出身で川勝平太知事と親交があり、県防災・原子力学術会議会長や静岡文化芸術大理事などを歴任した。“ふじのくに”づくりリーディング・アドバイザーのほか、21年には「南アルプスを未来につなぐ会」の理事にも就いていた。政府の宇宙政策委員会の委員も務めた。宮城大名誉教授の岩堀恵祐(69歳、6・8)の専門は環境工学。県中央新幹線環境保全連絡会議会長、静岡市環境影響評価審査会長、県立大環境科学研究所長も務めた。富士宮市医師会名誉会長の三浦護之(76歳、4・11)、元細江町教育長の早瀬和好(93歳、1・5)と名倉正雄(88歳、5・14)、元東伊豆町教育長の石井建三郎(83歳、11・14)も他界した。
 【スポーツ】静岡FC元社長の森下源基(82歳、4・30)は1994年から98年までJリーグヴェルディ川崎(現東京ヴェルディ)の社長を務め、黄金期を築いた。クラブ前身の読売クラブ時代に、ブラジルで活躍していた三浦知良(静岡市出身)の獲得に尽力した。納谷宣雄(81歳、9・8)は日本サッカー界をけん引した三浦泰年と知良の父で、現在のJ2藤枝MYFCと合併した東海社会人サッカーリーグ1部だった静岡FCの設立運営にも関わった。杉山勝四郎(79歳、8・1)は女子サッカーの普及に尽力し、清水第八スポーツクラブを発足させた。チームの指揮を執り1980年代に全日本女子選手権7連覇を達成した。竹内康人(63歳、6・20)は2010年12月から15年1月までJリーグ清水エスパルスの運営会社の社長を務め、クラブ運営に尽力した。藤井直伸(31歳、3・10)はバレーボールVリーグ男子の東レアローズでセッターとして活躍し、2017年のリーグ優勝に貢献した。21年東京五輪には日本代表として出場した。
 (敬称略、年齢の次は死去または死亡確認の月日、芸名などの人は本名略)

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