参院選静岡選挙区の終盤情勢詳報

 参院選は10日の投開票に向け、終盤戦に入った。静岡選挙区(改選数2)は自民党新人の若林洋平氏(50)=公明推薦=と無所属現職の平山佐知子氏(51)がリードを保ち、無所属現職の山崎真之輔氏(40)=国民推薦=が懸命に追っている。共産党新人の鈴木千佳氏(51)は厳しい戦い。諸派、NHK党、無所属の新人4氏は支持が広がっていない。

 

若林洋平候補(50歳、自民新)


 食料やエネルギー問題を含む安全保障の重要性を訴え、御殿場市長を12年余り務めた実績や政権与党の政策実現力を前面に押し出す。優勢を伝える報道を受けて楽観ムードが広がり、陣営は緩みを警戒。「昨年の補欠選挙の二の舞いは許されない」と引き締めに躍起だ。

 農業や建設業、商工会、医療福祉関係など100を超える団体から推薦を受け、徹底した組織戦を展開する。県内に張り巡らされた自民党支部のネットワークを生かし、党所属国会議員や県議らの全面支援を受けてきめ細かく街頭演説を重ねる。

 茂木敏充幹事長をはじめとする党幹部や閣僚経験者らが連日のように応援に駆け付ける。連立を組む公明党の比例代表候補とも連動し、票の上積みを狙う。出陣式や街頭には多くの県内首長が参加し、連帯を打ち出している。

 自民、公明支持層はともに6割強を固めた。一方、無党派層は1割強にとどまり、最終盤に向けて支持基盤以外への浸透が課題だ。県内のほぼ全域で優位に立ち、特に県東部・伊豆で支持が厚い。補選で苦戦した浜松市でも他候補をリードする。中東遠は無所属の女性候補と競り合い、地域によって若干の濃淡がある。

 年代別は10代の支持が約1割と伸び悩むが、残る年代ではいずれも候補者中トップ。特に40代以上で安定した支持を集める。男女別は男性の支持割合がやや高い。

 公示直前に18歳の女性との飲酒を週刊誌に報じられ自民党を離党した衆院議員の問題が長期化し、懸念材料となっている。

 

平山佐知子候補(51歳、無所属現)


 他の候補者と比べ組織力で劣る一方、1期6年で築いた人脈と元キャスターの知名度を武器に、先行する候補の背中を懸命に追う。序盤から中盤にかけては中西部の中山間地や伊豆地区など人口の少ない地域を回り、選挙前から続けてきた有権者と顔の見える距離での座談会や個人演説会を軸に運動を展開した。終盤にかけては他候補の組織票の追い上げを警戒し、街頭演説を多く組み込むなど、露出を増やしている。

 演説では人口減少対策や子育て世代への支援拡充、物価高への対応などを重点的に訴える。無所属の衆院議員が全国から応援に駆け付ける場面もあり、政党政治からの脱却やしがらみのない立場を繰り返し強調して無党派層へのアピールを強めている。無党派層の3割近くに浸透するが、浮動票の一層の掘り起こしが票の上積みの鍵を握る。

 2016年の前回選に民進党(当時)の公認候補として出馬した経緯から、水面下では野党系の地方議員らのバックアップもあるとみられ、立憲民主党の支持層の4割から支持を集めるとともに、社民党、れいわ新選組など候補者を出していない党の受け皿にもなっている。日本維新の会の支持層など保守層にも食い込んでいて、幅広い層から支持を得ているもよう。

 地域別に見ると、住民票がある中東遠で、先行する自民候補と拮抗(きっこう)する。県中部に本社を置く有力企業などが全面支援の姿勢を見せていることもあり、県中部でも猛追する。一方、伊豆・東部地区、浜松地区では差があり、浸透が課題となっている。
 

山崎真之輔候補(40歳、無所属現)


 地方議員15年の経験に加え、国民民主党と連合の推薦を受ける立場から「健全な野党候補は私だけ」と、他候補との差別化を図る。国民は静岡を重点区と位置付け、序盤から幹部が続々と応援に入った。ただ、昨年、週刊誌が報じた女性問題が影響し、支持基盤を固め切れていない。支持固めとともに、無党派層や若者への浸透を急ぐ。

 国民は玉木雄一郎代表が2度県内入りしたほか、前原誠司代表代行が公示日に浜松市浜北区でマイクを握った。最大の支持基盤の連合もフル回転し、各地で数十人規模の集会を開催。芳野友子会長は静岡市で「国会には若い世代の声が必要」と訴えた。静岡選挙区の対応を「自主支援」と決めた立憲民主党県連は、渡辺周代表ら国会議員と県議が個人的な立場で応援する。

 ただ、初当選した昨年10月の参院静岡選挙区補欠選挙の勢いはみられない。支持政党別では、国民支持者の3割、立民支持者は2割程度にとどまる。無党派層の支持も1割と伸び悩む。連合は組織内の引き締めに躍起だが、陣営幹部は「女性問題への反発が予想以上に大きい」と苦戦を語る。

 地域別では、目立つ地盤がない静岡市と東部、伊豆地域で厳しい。地元の浜松市では無所属現職候補と同程度の支持を得るが、自民新人候補には引き離されている。

 終盤は無所属現職候補を「与党系」と捉えた上で、「与党勢力の2議席独占を許してはならない」と政権批判票を狙う。インターネット上の仮想現実空間「メタバース」を選挙運動に活用するなど若者層へのアピールも強める。

 

鈴木千佳候補(51歳、共産新)


 生活者目線で「平和と暮らしを守る」として消費減税や最低賃金引き上げ、憲法9条を生かす平和外交を訴える。防衛費増額の議論には財源の不透明性を指摘し、「軍拡は暮らしを壊す」と警鐘を鳴らす。地域のスーパーなどでの小まめな街頭演説で政権批判を展開するが、無党派層に支持が広がらず苦戦している。

 自公政権に正面から対峙(たいじ)する「唯一の野党候補」を前面に出す。無所属現職の2候補が政府の予算案に賛成したことなどを引き合いに出し、両候補との差別化と政権批判票の取り込みを図る。

 共産支持層に浸透し7割を固めたほか、立民、維新、れいわ支持層の一部の支持を得ているが、無党派層の票が他候補に流れている。

 選択的夫婦別姓実現や男女の賃金格差是正などのジェンダー平等を訴え、女性票獲得にも努める。居住地の静岡市や浜松市など都市部で一定の支持を得ているが、中東遠や志太榛原で伸び悩む。

 

山本貴史候補(52歳、諸派新)


 所属する政治団体「参政党」への支持を呼び掛ける独自の選挙戦を展開する。街頭演説では党の重点施策に加え、袋井市議、県議の経験を基に政治改革の必要性を訴える。SNSを活用して若者世代へのアピールにも力を注ぐ。熱心な党支持者の協力を得て、支持拡大を狙う。

 

舟橋夢人候補(56歳、N党新)


 「消えた年金問題」の当事者だったという経験から、払い損にならない年金制度の確立を主な公約に掲げる。県西部を中心にポスター貼りを継続中で、党支持層以外への浸透はみられない。選挙戦の最終盤には街頭演説を計画する。

 

堀川圭輔候補(48歳、N党新)


 NHK受信料の徴収業務が強引だと問題提起し、料金を払った人だけが視聴できるスクランブル放送の実現など制度改革を訴えている。ポスター貼りを通じて各地の有権者に支持を呼び掛けるものの、広がりは限定的とみられる。

 

船川淳志候補 (65歳、無所属新)


 経営コンサルタントの経歴をアピールし、既得権益打破や建設的な議論ができる国会運営を訴える。街頭演説は行わず、都市部や若者が多い地域でポスターを貼りながら道行く人と対話を重ねる。準備が遅れたため支持は広がりを欠く。

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