【ロシア・欧州の国境問題】ロ、隣国に難民送り出しか 北欧混乱、人間「武器」に
ウクライナ侵攻を続けるロシアから、北欧の隣国フィンランドに中東やアフリカ出身の難民が押し寄せている。フィンランドは４月、北大西洋条約機構（ＮＡＴＯ）に加盟。反発したロシアがフィンランドを混乱させる「武器」として人々を送り出した可能性が高く、フィンランドは国境を封鎖した。ロシアの同盟国ベラルーシも東欧に難民を送り込んでいるとみられ混乱に拍車をかける。
▽奇妙な入国者
１１月、北極圏にあるフィンランド最北の国境検問所。最低気温は氷点下２０度ほど。雪が積もる中、新品の自転車でロシアから来る人々の列が続く。普段は北欧と無縁のイエメンやシリア、ソマリアなどの人々で、若い男性が多いが、家族連れも。フィンランドで難民申請をしたいと訴えた。
大半は取得して間もないロシアの一時滞在査証（ビザ）を持ち、車両専用の検問所を通るために最も安価で簡単な手段を取ったと考えられた。
▽かく乱工作
難民は夏から急増した。交流サイト（ＳＮＳ）では何者かがフィンランド行きを募っていた。ロシア経由で来た難民は約千人。フィンランド当局はロシアによるかく乱工作とみて厳戒態勢に入り、１１月末までに国境沿いの全検問所８カ所を閉鎖した。
フィンランド国境警備隊のマッティ・ピッキャニティー大佐は共同通信に「明らかにロシア政府が絡んでいるが、ロシア国境警備隊は見て見ぬふりだ。この件は『そちらの問題だ』と取り合うそぶりもない」と語った。
英ＢＢＣによると、検問所の閉鎖後、ロシア当局がフィンランドに入れないままビザの有効期限が切れた難民の拘束を始めたと報じた。拘束後、ロシアのために働かないかと持ちかけているという。ＢＢＣはウクライナの前線に雇い兵として送る可能性を指摘する。
▽揺れる欧州
“先例”となったのはベラルーシだった。ＮＡＴＯと欧州連合（ＥＵ）に加盟するポーランドと接し、両国国境には２０２１年、ＥＵ入りを目指すイラク人ら中東からの移民や難民が詰めかけた。ポーランド当局は放水などで越境を阻み、ＥＵ内では背後にロシアがいると非難の声が上がった。
ポーランド当局は昨年、国境沿いの約１８０キロに高さ５・５メートルの金属フェンスを設置した。だが国境を越え、さらに隣国のドイツなどを目指す人は後を絶たない。国境警備隊報道官は「毎日６０人から１５０人が越境を試みる」と話す。
ドイツでは難民の流入が増え、ポーランド国境沿いで不法入国者の取り締まりを一時強化した。ロシアと接するエストニアも難民急増に備え、国境閉鎖を検討中だ。今や欧州全体が揺さぶられようとしている。（ロンドン、ベルリン共同＝伊藤隆平、飯沼賢一、斉藤範子）
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