損保ジャパン立ち入り検査 営業偏重、契約者置き去り 親会社の監督責任も焦点【大型サイド】

 金融庁が損害保険ジャパンの立ち入り検査に乗り出す。中古車販売大手ビッグモーターが自動車保険を水増し請求している可能性を認識しながら、取引を再開した経営管理体制にメスを入れる。社内の異論を顧みず、契約者保護を置き去りにした背景には営業偏重の企業風土があった。親会社SOMPOホールディングス(HD)の監督責任の有無も焦点となる。

ビッグモーターと損保ジャパンを巡る構図
ビッグモーターと損保ジャパンを巡る構図

 ▽「信じるしかない」
 水増し請求の内部告発を受け、ビッグモーターは自主調査の結果を2022年6月、損保大手3社に報告した。不正を否定する内容で、損保ジャパンは7月25日、停止していた事故車両の修理をあっせんする取引再開に3社の中で唯一、踏み切った(9月に再停止)。
 取引再開を決定づけたのは7月6日、出席者を限定して開かれた役員会議だった。関係者によると、この席である役員が全国の工場を調査する必要性を訴えたが、営業企画部担当の飯豊聡副社長(61)は「過去の話を掘り返す必要があるのか疑問だ」と一蹴した。
 同席した白川儀一社長(53)は「調査を拡大して取引を再開しても、ビッグモーターと元の状態には戻れないだろう」と述べた。全国の工場に調査を拡大すればビッグモーターとの関係が悪化すると懸念した。「ビッグモーターの社長を信じるしかないのではないか」とも語った。
 白川氏は、取引再開の根拠にした自主調査結果が改ざんされたものだと会議前に部下から報告を受けていた。ビッグモーターは「工場長による不正の指示があった」という告発者の証言を「指示はなかった」と書き換えた。水増し請求の原因は、あくまでも作業や連係のミスだとされた。
 ▽野武士
 現在の損保ジャパンは14年、安田火災海上保険を中心とした損保ジャパンと、日本興亜損害保険が合併して「損害保険ジャパン日本興亜」として発足した。経済同友会の前代表幹事で、現在SOMPOHDのグループ最高経営責任者(CEO)を務める桜田謙悟氏(67)は合併後、損保ジャパン日本興亜の会長に就任した。桜田氏を含め、役員の出身母体はほとんどが安田火災だ。20年には社名から日本興亜が消えた。安田火災は猛烈な営業を仕掛けて「野武士集団」とも呼ばれ、日本興亜との合併で業界トップの規模に躍り出た。
 白川氏は22年4月、51歳で社長に就任した。桜田氏と年齢が近く、実力者だった西沢敬二前社長(65)の秘書を務め、異例の若さでトップに上り詰めた。「37人抜き」ともてはやされたが、金融庁幹部は「存在感があった西沢氏から白川氏に代わった途端に桜田氏の会社に戻った」との見方を示す。
 合併前の損保ジャパン社長に就任して以降、10年を超えトップの座に君臨する桜田氏。グループCEOと損保ジャパンの取締役を兼務しており、別の金融庁幹部は「桜田氏に直接話を聞かなければいけない」と話した。

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