パリで電動ボードシェア廃止 便利、エコでも「ノン」 事故やマナーに市民反対【大型サイド】

 世界的観光都市フランス・パリは9月から、電動キックボードのシェアリングサービスの廃止に踏み切る。至便性や環境面で利点もあるものの、事故やマナーの悪さに対し、市民が強く反対し「ノン」を突き付けた。日本では今月から運転免許なしで手軽に利用できるようになったが、パリっ子の視線は厳しい。

電動キックボードに乗る人たち=8日、パリ(共同)
電動キックボードに乗る人たち=8日、パリ(共同)
電動キックボードに乗るカップル=8日、パリ(共同)
電動キックボードに乗るカップル=8日、パリ(共同)
倒れたまま放置された電動キックボード=6日、パリ(共同)
倒れたまま放置された電動キックボード=6日、パリ(共同)
エッフェル塔の近くに置かれた電動キックボード=8日、パリ(共同)
エッフェル塔の近くに置かれた電動キックボード=8日、パリ(共同)
電動キックボードに乗る人たち=8日、パリ(共同)
電動キックボードに乗るカップル=8日、パリ(共同)
倒れたまま放置された電動キックボード=6日、パリ(共同)
エッフェル塔の近くに置かれた電動キックボード=8日、パリ(共同)

 エッフェル塔や凱旋門、ルーブル美術館―。パリに点在する観光名所を要領よく回るには、電動ボードは非常に便利。混雑する地下鉄を回避でき、車を利用するよりもずっと「エコ」だ。
 大通りをすいすいと走らせる中年男性や2人乗りの若いカップル。廃止直前にもかかわらず、多くの人が利用する。一方、路上に倒れたまま放置された電動ボードや歩行者とすれすれの所で速度を出す危なっかしい人も。パリの電動ボードによる2022年の負傷者は約430人で、19年から倍増した。
 「電動ボードなんてろくでもない。みんな運転の仕方を分かっていない。安全性に問題がある」。パリ在住の俳優ブランディーヌさん(39)が興奮気味に話す。別の女性は「最近知人が電動ボードと衝突して大けがし、死にそうになった」と打ち明けた。
 こうした声を受け、パリでは今年4月、18年に始まった電動ボードのシェアリングサービスを続けるかどうかを問う住民投票が実施された。投票率は7%にとどまったものの、有効票のうち約9割が反対。イダルゴ市長は8月末の契約満了をもってサービスを打ち切る意向を表明した。
 イダルゴ氏は6月、個人使用の電動ボードや電動アシスト自転車について、12項目の新たな規則を公表。「歩道を通行してはいけない」「制限速度を順守する」など、当たり前の内容に聞こえるが、フランスメディアは「それでもパリでは必ずしも守られていない」と皮肉交じりに評した。
 サービス続行を求める声もある。電動ボードの専門家ジャン・アルベールさん(56)は「郊外には駅まで電動ボードで行き、そこから電車で通勤する人も多い。サービスが廃止されれば車への回帰が起き、環境に悪影響を及ぼす恐れがある」と警告する。
 実際、郊外に住む女性アブデルさん(33)は駅までシェアリングサービスを使っている。「車は渋滞するし、電動ボードはエコな解決策だ」と訴える。
 環境に優しい交通手段への締め付けだとの批判に対し、イダルゴ氏は「100%自転車で移動できるパリ」を目標に掲げ、補助金などで電動アシスト自転車の普及に取り組む方針だ。(パリ共同=田中寛)

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