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【第47回日本アカデミー賞】最優秀受賞作を大胆予想!直木賞を的中させた静岡新聞教育文化部長の本命は…。

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「第47回日本アカデミー賞」。先生役は静岡新聞の橋爪充教育文化部長、聞き手はSBSアナウンサーの新城健太が務めます。 (SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」2024年3月6日放送)

(新城)今日はアカデミー賞の話題ですね。日本とアメリカの両方で授賞式が近づいてきているんですね。

(橋爪)第47回日本アカデミー賞の授賞式が8日、第96回アカデミー賞の発表授賞式が米国時間10日(日本時間11日)にそれぞれ開かれます。今週はその話題で映画ファンは盛り上がっているのではないかと思ってテーマに取り上げてみました。

静岡新聞の3月7日付朝刊のシネマ面で静岡市在住の映画評論家鬼塚大輔さんが、米アカデミー賞の主要部門の受賞予想をしてくれています。ということで、この「3時のドリル」では、日本アカデミー賞の方を主に取り上げます。

実はこの「3時のドリル」でお話させていただくようになってから、3つの文学賞のノミネート作品を紹介しながら受賞作を予想し、3回連続で的中させているんです。

(新城)素晴らしい!何を的中させたんですか。

(橋爪)2023年度に発表された直木賞の169回と170回、それから2023年12月の第11回静岡書店大賞の受賞者です。そこで、今度は映画賞に挑戦してみようかなと大胆なことを考えてやってまいりました。

(新城)ぜひ、この予想も的中させていただきたいですね。

(橋爪)どうでしょうか。映画ファンに怒られないように頑張ります。

(新城)あくまで個人的な見解ですもんね。

受賞予想の視点はあくまで「静岡びいき」

(橋爪)個人的な見解という意味で言うと、過去3回の文学賞の予想は「静岡びいき」でお送りしていますので、今回もそうした方向性でいきたいと思います。

(新城)お願いします。

(橋爪)それでは、日本アカデミー賞の作品賞の優秀賞5作品が発表されていますので、まずは名前を挙げます。是枝裕和監督の「怪物」、山崎貴監督の「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」、山田洋次監督の「こんにちは、母さん」、森達也監督の「福田村事件」、ヴィム・ヴェダース監督「PERFECTDAYS」。この中から最優秀賞が決まります。

最優秀作品は日本アカデミー賞協会員の投票で選ばれます。会員の顔ぶれは俳優、マネージャー、監督、脚本家、映画会社の関係者などで、2023年の会員数は3950人という数字が出ています。これだけの人が投票をして決めるということになります。

(新城)いろいろな肩書の方が関わって投票するんですね。

(橋爪)今紹介した5作品の中から静岡目線で予想というか願望を申しますと、本命は「ゴジラ-1.0」です!私が言うまでもなく本命に挙げる人が多いですが、今回の日本アカデミー賞では作品賞だけではなく、監督賞、主演男優賞、主演女優賞など最多の12部門で優秀賞を既に獲得しています。

(新城)多方面から評価を受けているんですね。

本命は「ゴジラー1.0」。紛れもなく「静岡映画」だ!

(橋爪)そして言っておきたいのは、これは紛れもない「静岡映画」なんです。

(新城)その要素をぜひ教えてください。

(橋爪)そもそも「ゴジラ」という映画は古くから作られていて、最初から静岡とは深い縁があるんです。2月29日付の静岡新聞シネマ面で静岡県とゴジラについての関わりの記事を出しているんですが、改めて簡単に紹介しますね。

シリーズ第1作は1954年11月公開の「ゴジラ」という作品です。ゴジラ誕生のいきさつは、この年の3月のビキニ環礁水爆実験と焼津漁港所属だった第五福竜丸の被ばくを反映したといわれています。

翌年の1955年には第2作「ゴジラの逆襲」が公開されているんですが、原作者の香山滋さんが熱海の温泉旅館に缶詰になって書き上げたものだということです。

(新城)そういう意味で静岡の要素が出てくるんですね。なるほど。

(橋爪)熱海とゴジラに関していえば、1962年公開の「キングコング対ゴジラ」では、日米のスター怪獣の決闘で1959年にできたばかりの熱海城が劇中で壊されています。こうした関係は、2018年から続く熱海怪獣映画祭の開催にもつながっています。

(新城)そこに結びつくんですね。

(橋爪)最新作「ゴジラー1.0」は裾野市と、浜松市の遠州灘や浜名湖でロケが行われています。

(新城)プロモーション中にその話は聞いたことがあります。

(橋爪)広く知られていることではないかと思います。ロケの縁で、東名高速道の浜名湖サービスエリア敷地内には等身大ゴジラの足跡があるという話も聞いています。私は直接見たことはないんですが、浜松周辺の方はご存じですかね。ロケやイベントを支援した浜松フィルムコミッションが力を入れてやっているそうです。

「ゴジラー1.0」は米アカデミー賞の視覚効果賞にもノミネートされています。その年に最も優れた視覚効果(VFX)を用いた作品に与えられますが、ほかの候補作には「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシーVOLUME3 」など強敵が揃っています。

ただ、映画評論家の鬼塚大輔さんは「『ゴジラ』は受賞が堅い」と断言しています。なぜかというと、アメリカでも興行的に成功していることや、ドラマ部分も含めてユーザーの評価が高いことが理由だそうです。そして何よりこれが最も重要だと思うんですが、ハリウッド大作の10分の1程度の予算で、非常にクオリティーの高い特撮を実現している点が強みだと鬼塚さんは語っています。

アメリカの映画界全体として、お金をかけた視覚効果についてはビジネスの限界が見えています。そういう意味で「ゴジラ」の〝費用対効果〟は大変優れているというように思われるのではないかということですね。

(新城)まさに現代的な作品ですね。タイパ、コスパ…。

(橋爪)うちの記者が取材したときに、浜松市フィルムコミッション推進室の原田憲治室長は「もし候補作の中で予算規模が小さい『マイナスワン』がオスカーを取れば、中小企業が大手に勝ったようなものだ」と語ってくれています。これはなかなか的を得ていると思います。

対抗はピエール瀧さん出演の「福田村事件」!?

(橋爪)ただ、ここまでしゃべってきてちゃぶ台返しのようですが、個人的には「福田村事件」が選ばれたらいいな、と思ってもいます。

(新城)あれ、本命は…。対抗ということですか。

(橋爪)五分五分だと思いたい。これも強引ですが「静岡映画」です。

(新城)はい、うかがいましょう。

(橋爪)静岡市出身のピエール瀧さんが出ています。非常に嫌な感じの役で出演されていて、味わいたっぷりです。これはドキュメンタリーで知られる森達也監督の、フィクション映画初挑戦の作品です。

1923年9月1日に関東大震災が発生した6日後に、千葉県の福田村に住む100人以上の村人が、薬売りの行商団15人のうち9人がを殺害した事件を描いたものです。「朝鮮人だ」と勘違いしたのがその理由なんですが、これを100年後に、映画として世に問う歴史的意味が感じられます。

(新城)なるほど。

(橋爪)人間の心の奥底にしまわれた差別意識が、極限状態の環境で誰かが一つスイッチを押すと、とんでもない爆発の仕方をしてしまう。自分事として考えたときに怖くなりました。

作品では新聞のあり方のようなことも問われていて、「朝鮮人が暴動を起こす」というデマの流布に加担する描写もありました。これもまた他人事ではないなと思ったところですね。

(新城)自分が報じたことがどういう影響を及ぼすかというところを考えさせられるということですね。

(橋爪)心情的にはこの映画が受賞したらものすごいことだなというふうに思っています。

「静岡映画」の話を続ける前に、もう一つ本当に有力な作品を紹介しましょうか。是枝裕和監督の「怪物」です。

(新城)ちょっと待ってくださいよ(笑)。ノミネート5作品なので半分を超えましたよ!

(橋爪)そうですね(笑)。この作品は2023年のカンヌ国際映画祭で脚本賞を取っているので、既に国際的な評価を得ています。さらに、日本アカデミー賞でいえば、是枝監督の映画はこのところ3作連続で作品賞を取っています。2015年に「海街diary」、2017年に「三度目の殺人」、2018年に「万引き家族」。

投票の資格がある方々にとっては、是枝映画はかなり好みなのかなということを想像してしまいますよね。

(新城)実績もありますしね。

主演女優賞と助演男優賞も静岡との縁が!


(橋爪)残り時間も少なくなってきたので、「静岡映画」ということであと2つ挙げます。主演女優賞の綾瀬はるかさん。これは新城さんも取材されていましたよね。

(新城)そうですね。裾野市で撮影した「リボルバー・リリー」に出演されていますね。

(橋爪)はい。そして「月」で助演男優賞の磯村勇斗さん。言わずもがなですが沼津市出身ですね。この2部門も勝手に「静岡映画」に認定していますので、最優秀を取ってもらいたいですね。

要するに、静岡勢頑張れ!ということで8日の日本アカデミー賞の結果を楽しみに待ちたいなと思っています。

(新城)ここまでいろいろ挙げたらどれかが当たるんじゃないですか。最後に「これだ!」という本命を明言していただきましょう。

(橋爪)一番の本命は「PERFECTDAYS」かもしれませんね。

(新城)えー(笑)

(橋爪)自分が泣いたということでいうと「PERFECTDAYS」ですよね。

(新城)昔のクイズ番組の質問をしていいですか。「ファイナルアンサー」でいいですか。

(橋爪)そうですねぇ…。作品を見た方であればわかると思うんですけど、ラストの長回しの役所広司さんの顔が。

(新城)そこがすごいと言いますよね。

(橋爪)あれはこれまで見たことのないようなシーンですね。

(新城)では「PERFECTDAYS」ですか。今日の出来事はきちんとゴゴボラケパーソナリティーの山田門努さんにお伝えしますんで。

(橋爪)本当ですか。では、ごめんなさい。「ゴジラ」にしてください。

(新城)ファイナルアンサーでいいですか?

(橋爪)はい。「ゴジラ-1.0」でいきましょう。

(新城)リスナーの皆さん、ファイナルアンサーが出ましたからね。「ゴジラ-1.0」が最優秀作品賞を受賞するという予想をいただきました。

いや、なんか最後ちょっと二転三転しましたけれども、大丈夫ですか。

(橋爪)1つだけ話題に挙げないのも悪いですよね。「こんにちは、母さん」にも頑張ってほしいですよね。山田洋次監督は年配の方からの支持が厚い監督ですし。

(新城)もう遅いです(笑)。

(橋爪)主演は吉永小百合さんですからね。でもやっぱりゴジラですね。そんな感じでいいでしょうか。

本当はアメリカのアカデミー賞の話もしたかったんですが、日本で未公開の作品がいくつかあるので言及しにくい部分もありまして。その辺は3月7日の静岡新聞をご覧になっていただければ。

(新城)わかりました。今日は日本アカデミー賞に特化していろいろ教えていただきました。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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