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キングレコードはなぜ“機動戦士ガンダム”の楽曲を手掛けるようになったのか 90年超の歴史を振り返る


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』から、今回はキングレコードとアニメの関わりについてお話いただきました。※以下語り、藤津亮太さん

1931年創業、キングレコード

実はキングレコードは、講談社と関係のある会社なんです。1931年に講談社から音楽を扱う部門の別会社としてスタート。「キング」というのも当時講談社が出版していた雑誌名に由来しています。

そんな歴史のある会社が、アニメと本格的に関わるようになるのは1970年代になってから。1970年代当時のアニメのレコードシーンといえば、もう日本コロムビア一強でした。キングレコードも、子ども向けのいろいろな楽曲、童謡などを扱うチームの中でアニメも扱っていたんですが、有名なタイトルはコロムビアに取られてしまい、そんなにいい企画は取れませんでした。

『無敵超人ザンボット3』という転機

ところがある時、当時キングレコードの社員であった音楽プロデューサーの藤田純二さんが「今度、日本サンライズという新しい会社がオリジナルロボットアニメをやる」という話を聞きつけてきます。そこでキングレコードはサンライズに売り込みをかけ『無敵超人ザンボット3』の音楽を手掛けることに。キングレコードにとって、ここが大きな転機となりました。次作の『無敵鋼人ダイターン3』はコロムビアに取られますが、その次の『機動戦士ガンダム』をキングレコードが担当することになるのです。

当時は主題歌のシングル盤を売るのがレコード会社のアニメビジネスでした。BGMも作りますがそれはあくまでお付き合い。主題歌で儲けさせてもらうからセットで作るというような感じだったのです。ところが、ちょうどその頃「アニメファン」、「特撮ファン」がだんだん大人になってきて、BGMそのものを欲するファンがいるということが認知されるようになってきました。

そこでガンダムの楽曲では、藤田さんが最初からステレオで録ろうと提案。それまでのテレビアニメの劇伴はモノラルで録っていたんですが、はじめから劇伴でビジネスを成立させるため、レコード化を想定してステレオで録ったわけです。実際に4月放送開始の2カ月後、6月に最初のBGM集を発売しています。1枚目はガンダムがビームライフルを構えたわりと子どもっぽいデザインだったんですが、2枚目はキャラクターデザインの安彦良和さんの描き下ろしイラストをジャケットにして、サブタイトルも「戦場で」と付いたかっこいい作りになり大ヒットを記録しました。

アニメレーベル「スターチャイルド」誕生

その後、『ガンダム』の劇場版が三部作で公開されることが決まります。その頃、藤田さんはキングレコード内にアニメ用のレーベルを作りたいと考え、1981年に「スターチャイルド」というレーベルを立ち上げます。映画『2001年 宇宙の旅』にヒントを得たネーミングです。このスターチャイルドは、その後90年代のアニメを語る上で欠かせないレーベルとなり、2016年までレーベルは続きます。

ちなみに『機動戦士ガンダムⅢ めぐりあい宇宙編』の主題歌アレンジに呼ばれたのが、後に『新世紀エヴァンゲリオン』を手掛けることになる鷺巣詩郎さん。鷲巣さんは『ふしぎの海のナディア』で、庵野秀明さんと出会うことになるのですが、その出会いを準備するきっかけも、スターチャイルドというレーベルで起きていたんです。

1931年、戦前に生まれた会社が創業から50年後に「スターチャイルド」というレーベルを立ち上げ、アニメと深くコミットするようになり、今に至るキングレコードの存在が確立されていくーー。今回は、キングレコードに歴史ありという話でした。(2023年1月23日放送)

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送・毎週日曜日15:00~16:30 再放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!

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