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2018.8.15

終戦記念日

 天皇陛下にとって、2018年8月15日は在位中最後の終戦記念日となった。

 全国戦没者追悼式で、参列者全員での黙禱(もくとう)の後、天皇陛下が「おことば」を述べた。「深い反省」という文言を4年連続で使い、「戦争の惨禍が再び繰り返されぬこと」を切に願うとした。「戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ」という新しい表現も盛り込まれた。

 戦没者を悼み、平和を願い続けた陛下の思いの表れのように見えた。

 その思いの「原点」には、自身の疎開体験がある。静岡・沼津から栃木・旧日光田母沢御用邸、そして奥日光へ。戦況の悪化に伴い、小学生だった陛下は各地を転々とした。空腹で同級生と競うように木の実を採り、父・昭和天皇が終戦を告げる玉音放送にじっと耳を傾けた。東京に戻る列車内では焼け野原になった光景を目にした。

 「平和国家建設」。

 終戦翌年の書き初めにしたためた言葉通り、陛下は平和への願いを行動で表すようになる。

 1960年に広島県で原爆孤児と対面、75年の沖縄初訪問では火炎瓶を投げつけられながらも慰霊を続けた。「記憶しなければならない四つの日」として沖縄戦終結の日、広島・長崎への原爆投下の日、それに終戦記念日をあげ、毎年欠かさずに黙禱を捧げてきた。

 89年の即位後も、慰霊の旅は続き、むしろ頻度を増していった。戦後50年に長崎、広島、沖縄。60年にサイパン。70年にパラオ…。「戦争の風化に焦りとも言える思いがあったのだろう」と元側近は話す。

 88年の8月15日。昭和天皇は体調が悪化するなか、静養先からヘリで帰京して追悼式に出席、これが逝去前最後の公式行事となった。

 それから30年余、父を継いだ天皇陛下の思いは、新たに天皇となる皇太子さまら次世代の皇室へ引き継がれる。

戦後の長きにわたる平和な歳月に思いを致しつつ、ここに過去を顧み、深い反省とともに、今後、戦争の惨禍が再び繰り返されぬことを切に願い、
在位中最後の全国戦没者追悼式で
2018年8月15日