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2011年10月18日19時46分
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震災の中、報道の責務果たす 新聞大会で特別決議

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写真:「新聞界が直面する諸課題」をテーマに討論するパネリスト=18日午後、京都市東山区、高橋一徳撮影拡大「新聞界が直面する諸課題」をテーマに討論するパネリスト=18日午後、京都市東山区、高橋一徳撮影

 第64回新聞大会が18日、京都市東山区のウェスティン都ホテル京都で開かれた。日本新聞協会(会長=秋山耿太郎〈こうたろう〉・朝日新聞社社長)主催で、全国の新聞・通信・放送各社の代表ら530人が参加。混迷する社会の中で新聞の果たすべき役割を議論した。

 3月11日の東日本大震災後、初めての大会。秋山会長はあいさつで「震災の混乱の中で、人々は『頼りになるのはやはり新聞』との思いを強めた」と述べ、「真実を追究し、時代とともに歩んでいく新聞の役割をしっかり認識し、国民の期待にこたえていかなければ」と強調した。

 この後、すべての新聞関係者が震災後の困難の中で発行継続に奮闘したことに触れ、「今なお続く震災との闘いの中で、真に読者の視線に立った、社会の公器としての責務を果たし続けることを誓う」とする初めての特別決議を採択した。

 社会文化に顕著な功績があった人物に贈られる新聞文化賞が小池唯夫・元毎日新聞社社長(78)に授与された。1995〜99年に新聞協会長を務め、再販制度の維持に尽力したことなどが理由。小池氏は「新聞は民主主義社会を支える基盤。何としても守り抜かなければ」と後輩の新聞関係者たちにエールを送った。

 今年度の新聞協会賞を受けた8件の関係者の表彰式もあった。編集部門6件のうち5件は、岩手日報社(本社・盛岡市)、河北新報社(同・仙台市)などの震災関連報道が占めた。

 「新聞界が直面する諸課題」をテーマにしたパネルディスカッションでは、被災地の新聞各社の社長らが震災時の対応を報告。パネリストの新聞協会役員たちが今後取り組むべき課題について意見を交わした。

 河北新報社の一力雅彦社長は震災当日、新聞の編集システムが被害を受け、災害時の協定を結んでいた新潟日報社(同・新潟市)の協力で発行にこぎ着けた経緯を説明。岩手日報社の三浦宏社長も災害協定を結ぶ東奥日報社(同・青森市)などの協力で、一日も休まず印刷ができたと謝辞を述べ、「新聞が発行されていることが被災地の励みになった」と振り返った。

 現在、災害協定は各社が任意に結んでいる。北海道新聞(同・札幌市)の村田正敏社長は「新聞社間のつながりを大事にする戦略が大事になってくる」と指摘。新聞協会の主導で災害協定のネットワークを築いていくべきでは、と呼びかけた。

     ◇

 採択された特別決議は次の通り。

 2011年3月11日、日本列島は大地震と大津波に襲われ、原子力発電所の重大事故に見舞われた。死者・行方不明者がおよそ2万人に及んだ東日本大震災である。

 被災地の人々が耐え、全国からさまざまな機関やボランティアが駆けつけ、闘いと支援の日々が始まった。新聞もまたその使命を果たすべく、残されたあらゆる手だてを駆使して報道を続けた。

 通信が途絶え、輪転機も回せぬ中で、どう使命を果たすか。ある新聞社は手書きの壁新聞を作り上げ、避難所に張り出した。車載バッテリーでコピー機を動かし新聞を印刷、配布した社もある。新聞発行を継続しようとするその使命感と熱意が多くの被災地にあった。

 災害援助協定を結んでいた新聞社同士の協力もあった。自家発電機を使っての印刷支援、燃料の提供……。記事は交換され、遠く離れた他社から届く被災地への応援メッセージも掲載された。また、他県の避難先に被災地の地元紙を届けたり、地元紙の題字を掲げた張り出し号外を連日発行したりする新聞社もあった。そして、各社は道路が寸断されガソリンが枯渇するなか、輸送網を死守し、新聞販売店は戸別配達を守り抜いて読者の元に新聞を届けようとした。

 取材・執筆し、紙面を作り、印刷し、配達する。この当たり前のことが極めて困難になった。避難所では届けられた新聞をむさぼるように読む被災者たちの姿があった。「新聞を必要としている読者のために」。我々は、新聞に対する人々の大きな期待を改めて感じた。そこに「新聞の原点」があった。

 復旧復興の道のりは長い。そしていまだ収束しない原発事故は、過去の経験ではとらえきれない課題と、それを冷静に乗り越えていく知識、情報を求めている。新聞は誠実で的確なパートナーでありたい。

 未曽有の大災害に、新聞協会会員社であると否とにかかわらずすべての新聞人が発揮した使命感と遂行の力を改めて分かち合おう。そして、今なお続く震災との闘いの中で、真に読者の視線に立った、社会の公器としての責務を果たし続けることを誓う。

     ◇

 また新聞大会決議も次の通り採択。

 日本経済は慢性的な財政危機を脱することができず、国内産業が疲弊するなか、戦後最高の円高に苦しめられている。東日本大震災と福島第一原発事故がもたらした甚大な被害は、国中を大きな不安で満たした。人々は日々の生活と将来に希望が持てないでいる。

 われわれは、この国難に際し、ジャーナリズムの公共的な使命を心に深く刻み、政治、経済、環境など多角的な視点から、日本が進むべき道を読者に提示し、未来への展望を切り開いていかねばならない。

 今後も読者に寄り添い、人々から信頼されるメディアであり続けるよう全力を尽くすことを誓う。

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