2010年4月28日
端正な顔立ちとミステリアスな存在感で人気沸騰中の俳優・成宮寛貴が、この春のTBSドラマ「ヤンキー君とメガネちゃん」で連続ドラマに初主演している。「27歳にして金髪の高校生役」と照れ笑いしながらも、デビュー10年目の節目に射止めた大役への思いは熱い。映画にCMに役者として活躍する傍ら、そのファッションセンスにも注目が集まる超売れっ子。そんな彼を突き動かすものは――。(アサヒ・コム編集部 文・柏木友紀、写真・高山顕治)
「おまえ、こんど高校生役やるんだって〜」。今回の役が決まってほどなく、仲の良い小栗旬からこんな電話がかかってきたという。
「ブチッと電話を切りましたね(笑)。最初はこうやって役者友達にバカにされると思ったけれど、次第に自分がその年だった頃の、あの揺れる気持ちや出来事を、いまだからこそ冷静に客観的に見られるかも、と考えるようになった。あの頃、自分の居場所や将来の方向性を見つけなきゃと、焦ったり不安に思ったりしていましたね」
自立心が強く、早く世の中に出て働きたかった自分。勉強嫌いだった自分。今回の役では、原作マンガにより近づけようと、髪は金髪、制服は腰パン気味の太めズボンで挑む。「この髪は役にジャンプできるアイテム。周囲に恐る恐るリサーチしたら、まあいいんじゃないのとなって、ホッとしました」
演じるヤンキー高校生は「学校一の不良」とレッテルをはられているが、根は正義感の強いイイヤツ。仲里依紗扮するヒロイン「メガネちゃん」と出会い、少しずつ自分の生き方を見いだしていく。
「学校や会社、ご近所。誰もがコミュニティーに属しているけど、その中で真の仲間や居場所を見つけていくのって、とっても難しい。金曜夜の放送を家族で見て、月曜日にまた『戦場』に戻ってみよう、もう一度トライしてみようと思ってもらえたら」
自身も時折、周囲にカンチガイされてしまうことがある。「思っているよりボクは目力が強くて、いつも眉間(みけん)にシワが寄ってるらしい。『ナリミヤ、なんかキゲンが悪い』とか思われるんです。何も考えてないのに。カンチガイって、誰にでもおこることですね」
確かに、くっきりした二重まぶたに鋭い眼光、首を少しかしげる姿はたまならなくキザでニヒル。それでいて、ほほ笑む時は表情筋が極めて豊かだ。この容姿とセンスを買われ、ファッショニスタとしての活躍も目立つ。
自ら厳選した服や小物を集めたセレクト・ショップをネット上に持ち、昨年末には実際に限定ショップを渋谷に開いた。ブランドの設ける賞を相次いで受賞、東京ガールズコレクションにもゲスト出演して女子を熱狂させた。が、思いがけないことを言う。
「ボクにとってファッションは、いじめられないための『道具』だった。転校生で、母親によくラルフローレンを着せられて目立っていたから、最初は随分やられた。でも、いじめは特技があればまぬがれる。ならば、オレはおしゃれになってやろうと。アメ横に通いました」
服はもちろん、ケーキをプロデュースすれば「成宮ロール」と大人気に。いま気になっているのは街角のイルミネーションのデザインだ。
「センス、そしてそれを表現することは様々なことに応用できる。食べ物も服も、演技も、こんなのを合わせたら、こうアレンジしたら、と工夫するのが好き。パティシェ、デザイナー……、自分の中にはまだ何かあるかも、もっと適した仕事があるかもと、思ってしまうんです」
00年のデビューから10年。「実は10年もこの業界に居られるなんて、半分くらい思っていなかったんです。それでも10年やってるから再会できるキャストやスタッフ、ファンがいると、実感しています。このドラマを、またこの先の10年頑張っていく勢いにしたい」
締めは、やはり「ナリミヤでした」。
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なりみや・ひろき 82年、東京生まれ。00年に宮本亜門演出の舞台でデビュー、ドラマ「ごくせん」「イノセント・ラヴ」「ブラッディ・マンデイ」、映画「NANA」「ドロップ」など多数出演。