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吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」内場勝則に聞く

2012年10月3日

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写真:吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」制作発表より=撮影・小林勝彦拡大吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」制作発表より=撮影・小林勝彦

写真:吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」に出演する内場勝則=撮影・小林勝彦拡大吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」に出演する内場勝則=撮影・小林勝彦

 吉本興業の歴史を月替わりで12本の芝居で見せるシリーズ「吉本百年物語」の第7弾「これで誕生!吉本新喜劇」が10月7日から、大阪・なんばグランド花月で上演される。10月公演は、名コンビ花紀京と岡八郎の新人時代を描いた、吉本新喜劇の始まりの物語だ。制作発表では、内場勝則、千原せいじ、小西美帆、金山一彦らが登場し、それぞれ意気込みを語った。朝日新聞デジタルでは会見後、花紀京役の内場勝則に単独インタビューして、花紀京役を演じることなどについてコメディアンの視点から語ってもらった。(フリーライター・岩瀬春美)

 戦争で多くの演芸場を失った吉本興業は昭和34年、「うめだ花月劇場」で演芸を再開した。その頃、人気漫才師、横山エンタツの息子の花紀京は、自らも芸人の道へ進むために吉本に入る。そこで、研究生として吉本入りした岡八郎と出会う。2人の若者がライバルとして、共に新しい時代の喜劇を生み出していく、というのが10月公演のあらすじ。「吉本新喜劇の誕生から53年。その始まりの時期に奇跡のようにめぐり会った花紀京さんと岡八郎さんが、どのように成長していったのかがドラマの軸です」と脚本を書いた長川千佳子氏は話す。

 のちに吉本新喜劇の二枚看板として活躍した名コンビ、花紀と岡を演じるのは、吉本芸人の内場勝則と千原せいじ。内場は「花紀師匠は新喜劇のパイオニアですので、かなりプレッシャーもあります。でも僕は若い頃の姿は知りませんので、ニュートラルな気持ちで僕なりの花紀京を演じたいと思います」と語り、千原は「ええ意味で気楽にやろうかなと思っていたら、岡八郎師匠のお弟子さんやった(オール阪神・巨人の)巨人師匠に『絶対観に行くから、ちゃんとせえ』と言われて、ちょっとプレッシャーを感じています」と話した。

 また今作では、女優の白鳥しのぶという架空の人物が登場する。ヒロインのしのぶをめぐって、花紀と岡がここでもライバル同士になるというものだ。しのぶ役を演じるのは女優の小西美帆。俳優の金山一彦は、落語家で喜劇役者であり、また作家として吉本新喜劇の創成期に参加していたという笑福亭松之助を演じ、舞台ではストーリーテラーの役割も担う。

 演出の湊裕美子氏は「私自身、吉本新喜劇を千本近く作っていますが、この作品では新喜劇とはまったく違う、芝居の醍醐味をしっかりお観せできるように考えています。私たちがすごいと思っている2人の漫才師も若い頃、1人の人間として、泣いたり、笑ったり、悩んだり、喜んだりしていた、人間の当たり前の気持ちの流れをしっかりと出したい。今回は2人の若い頃の青春グラフィティになります」と話した。

   ◇

 制作発表終了後、朝日新聞デジタルでは、花紀京役の内場勝則に単独インタビューを行った。花紀とは、師弟関係にもあった内場。花紀・岡コンビと同じ舞台に立っていた頃は「この2人がわらかすから、あとはスムーズに芝居が運ぶように、という舞台の作り方だった」という。そこで「自分はこのままじゃあかんな」と思い、まずは芝居の基礎を習得した。「他の人がまずボケようとするところを我慢して、芝居で持っていく。芝居の基礎ができたら、笑いで崩すのはいつでもできますから」

 お笑いの世界で生き残るための自己分析も欠かさなかった。「変な顔も声もない。際立った特徴がない僕が選んだのは『間』でした」。植田まさし作の漫画「かりあげクン」を例に出し、「僕ができるテクニックは、ああいう飄々としてぽっとボケるパターンやと。それが、花紀師匠に近い部分があった」と内場は話す。周囲とのバランスを見ながら、内場はボケもツッコミも器用にこなしていった。

 長年、吉本新喜劇の舞台で活躍している内場だが、今作品で花紀役を演じることは複雑なようだ。「役者の方がコメディアンの役をやると、一歩引きめで見られるのですが、漫才師が漫才師の役をやると、芝居として見てくれないから怖いですよ。観客が無意識のうちに、そこでも笑いを期待する目をするんです」と内場は話し、「演出の方による素晴らしい役作りがこれから待っていると思うので、期待していますけどね」と含み笑い。

 現役のコメディアンである内場と千原が、往年のスター、花紀と岡の青春時代を演じる「これで誕生!吉本新喜劇」。今でこそ馴染みの「吉本新喜劇」がどうやって生まれたのか、が分かる興味深い舞台になりそうだ。

【インタビュー全動画はこちら】

◆吉本百年物語10月公演「これで誕生!吉本新喜劇」
2012年10月7日(日)〜31日(日) なんばグランド花月
⇒詳しくは、吉本百年物語公式サイトへhttp://www.yoshimoto.co.jp/100th/monogatari/

《筆者プロフィール》岩瀬春美 福井県小浜市出身。人生の大半を米国ですごした曾祖父の日記を読んだことがきっかけでライターを志す。シアトルの日本語情報誌インターン、テクニカルライター等を経て、アサヒ・コム編集部のスタッフとして舞台ページを担当。2012年1月よりフリーランスのライターとして活動。


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