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NGOとは|意味やNPOとの違い、具体的な活動内容を解説

NGOとは|意味やNPOとの違い、具体的な活動内容を解説
NGOとは(デザイン:増渕舞)
NPO法人れんげ舎代表理事/長田英史

NGOとは、政府や国際機関などに属さず、社会問題の解決・人権の促進・環境保護・教育の提供などさまざまな活動をおこなう市民団体のことです。この記事では、NGOの主な活動内容や歴史、代表的なNGOを、30年以上非営利活動に従事してきた著者が解説します。

著者_長田英史さん
長田英史(おさだ・てるちか)
1972年生まれ。大学在学中の1990年より「子どもの居場所づくり」に関する教育運動に参加。1996年にれんげ舎を設立。まだNPO法人格も存在しない当時、大学卒業後に就職せず活動を仕事にしたパイオニア。長年の活動経験を生かしたコンサルティング・講演は全国で年間150回以上にのぼる。著書『場づくりの教科書』(芸術新聞社)。Voicyパーソナリティ。

1.NGOとは

NGO(非政府組織:Non-Governmental Organization)とは、政府や国際機関などには属さない民間組織で、社会的な問題や課題の解決・人権の促進・環境保護・教育の提供など、さまざまな目的を持って活動している団体を指します。

「非政府組織」という言葉をそのまま解釈すると、政府でない組織は全部NGOとなってしまいますが、外務省は「貧困、飢餓、環境など、世界的な問題に対して取り組む市民団体であれば、NGOと呼ぶことができます」としています(引用:ODAとは?国際協力とNGO|外務省)。

「非政府」という独特な表現が用いられる理由は、その起源にあります。国連で開催される協議の場には、各国の政府だけでなく、そのテーマに関連した活動をする民間組織も出席します。その際に政府組織と非政府組織を区別する必要が生じて、NGOという略称が使われるようになったといわれています。

(1)NGOの活動分野と主な取り組み内容

NGOの活動分野として、一般にいわれているのは下記の11分野です(参照:NGOデータブック2021 p.30|外務省)。もっとも、NGOは社会問題全般に対応する形で活動が始められているため、この分野の種類は増減することも考えられます。

1. 教育・職業訓練
2. 開発・貧困
3. 保健・医療
4. 飢餓・災害
5. 環境
6. 農業・漁業
7. 人権
8. 政策提言・調査研究
9. ネットワーク
10. 平和・政治
11. 経済

このように、NGOは幅広い分野で活動しています。一つの分野に特化した活動をしているNGOもあれば、複数の分野にまたがった活動をしているNGOもあります。

ただ、こうした活動分野の種類分けは、NGOの多様な事例を分類しただけに過ぎません。各団体は、それぞれに個別のミッションを掲げ、活動しています。

(2)NGOとNPOの違い

NPOは、非営利団体(Non-Profit-Organization)の略称です。NPOは社会的な目的や使命(ミッション)を持ち、利益ではなく何らかの活動目的を達成するために活動する団体を指します。日本では、多くの場合「NPO法人(特定非営利活動法人)」を意味します。

一方、NGO(非政府組織)とは、先に述べたように「貧困・飢餓・環境など、世界的な問題に対して取り組む市民団体」を意味しています。

NGOとNPOの違いは、活動内容と法人格の有無です。外務省は「日本では、海外の課題に取り組む活動を行う団体をNGO、国内の課題に対して活動する団体をNPOと呼ぶ傾向にあるようです」(引用:ODAとは?国際協力とNGO|外務省)と説明しています。

また、NGO法人という法人格は存在しません。NGOが法人格を取得したいときには、NPO法人や一般社団法人などが選択肢になり得ます。実際に、国内に拠点を持つNGOが、NPOの法人格を取得して活動する例は数多くあります。

2.NGOの歴史

NGOは登録制でないため、正確な実数は把握できませんが、日本で400団体以上、世界では4600団体以上といわれています(参照:国際協力NGOとは?|外務省非政府組織〈NGO〉との関係|国際連合広報センター)。

ここでは、世界におけるNGO誕生の歴史と、日本との関わりについて紹介します。

(1)世界におけるNGOの歴史

NGOの始まりは、植民地時代のキリスト教会の布教・慈善活動からといわれています。

19世紀には、キリスト教会・関連団体・赤十字などが活動を開始します。その後世界大戦をきっかけに被災・戦災孤児・難民救済・復興などを目的とした救済活動が始まり、開発途上国への協力は1950年代後半から始まりました。

1960〜1970年代にはアジア・アフリカの独立を受けて活動が活発化し、環境・人権分野の活動が盛んにおこなわれるようになりました。

(2)日本におけるNGOの歴史

日本の国際協力の始まりは、1938年にキリスト教信者が中国でおこなった、日中戦争の被災者や難民への医療支援であるといわれています。

1950〜1960年代にかけて、日本社会では公害の問題に注目が集まりました。ほかにも同和問題・原水爆問題・安保闘争などの社会問題に対し、市民運動が活発化しました。こうした団体が、後のNGOとしての活動の基盤を形成したともいえます。

1979年、インドシナ難民問題をきっかけにNGOが本格的に活動を開始します。1980〜1990年代にかけて、開発途上国への援助や環境問題・人権問題に対する活動が多様化し、NGOの数も増加しました。現在では、政策提言・環境啓発・フェアトレードなど、国内での活動も活発化しています。

3.NGOとSDGsの関係性

SDGsが掲げられた現在、NGOの役割は改めて重要視されています。

SDGsは、2015年に国際連合が採択した「17の目標と169のターゲット」からなり、2030年までに達成を目指す世界共通のアジェンダです。多くのNGOがSDGsに関係する活動をしていますが、ここでは四つの活動を紹介します。

(1)実践的な支援活動の展開

多くのNGOは自身の専門性を生かしてさまざまな支援活動を展開しています。活動の一例として以下があります。

● 教育分野のNGOが教育機会を提供
● 保健関連のNGOが医療サービス・衛生条件の改善に取り組む
● 環境NGOが森林保護・環境保全に関わる活動を開始

いずれも、SDGsの掲げる目標に直結する活動です。

(2)普及・啓発活動

多くのNGOが社会課題に対して積極的に情報発信をしているのは、困っている人たちがいることや国内外にさまざまな問題があることを知ってもらうためです。たとえ困っている人がいても、存在が知られていなければ支援は集まりません。

普及・啓発活動は、NGOの活動に関わったことのない市民や企業などの理解を得て大きな力になります。SDGsの目標達成には、政府・専門家だけではなく企業・一般市民など多様な主体の参加・協力が不可欠です。今後も、よりいっそう正確で戦略的な普及・啓発活動が求められます。

(3)政策提言

なかには自身の専門的な知識・経験を生かして、政府に対する政策提言をおこなうNGOがあります。政策提言には、法制度の改善要求・政策方向の提言・具体的な施策の提案などが含まれます。

NGOの活動現場を理解していたり、長期にわたって課題に取り組んだりしている関係者からの提言は貴重なものです。SDGs達成に向けた社会全体の動きの促進は、あまり目立ちませんが重要な働きかけです。

(4)協働・連携の推進

SDGsの目標達成には、多様な主体の参加が必要です。NGOも単体で活動するのではなく、ほかのNGO・企業・政府・学術機関などと協働・連携して活動しています。

このような協働・連携は、各組織のリソースを最大限に活用することにつながるため、より大きなインパクトを生む可能性を秘めています。

4.代表的なNGOと活動内容

ここでは国際的に有名なNGOを五つ紹介します。

どれもメディアなどで取り上げられることの多いNGOですが、どのような理念を持ち、どのような活動をしているのかは知らない人が多いのではないでしょうか。

報道や活動の表面だけを見ると「自分には関係ないな」と思いがちですが、その理念や活動内容を知ると、心揺さぶられることがあるかもしれません。ぜひ各団体のホームページを訪れてみてください。

(1)アムネスティ・インターナショナル(AMNESTY INTERNATIONAL)

アムネスティ・インターナショナルは、1961年に発足した国際人権NGOです。1977年にはノーベル平和賞、翌年には国連人権賞を受賞しました。活動している国・地域は200カ国、サポーターの数は1000万人を超えます。日本支部は、1970年に設立されました。

アムネスティ・インターナショナルは死刑廃止を訴えており、日本国内で死刑が執行された際に声明を発表する様子が報道されることもあります。

アムネスティは人権を守る活動をおこなっており、死刑廃止はその一環です。死刑廃止以外にも「難民と移民」「LGBTと人権」「気候変動と人権」など、人権に関する幅広い活動をおこなっています。

また、アムネスティ・インターナショナルは独立・中立の立場で活動するため、各国政府から活動資金への援助は受けていません。活動費用はすべて寄付や会員の会費、活動収入でまかなわれています(参照:AMNESTY INTERNATIONAL)。

(2)国境なき医師団(MSF)

国境なき医師団は、1971年に発足した非営利の医療・人道援助団体です。助けを必要とする世界中の国・地域に無償で医療を提供しています。

2011年に発生した東日本大震災では、発災の翌日から活動を開始したことで有名です。医師や看護師を含む医療チームだけでなく、臨床心理士で構成された心理ケアチームが連携し、援助が届きにくい地域を移動しながら診療し、医薬品・救援物資の配布などをおこないました。

国際的には、エボラ出血熱など致死性の高い感染症の現場に入り、懸命に対応にあたっています。

国や政策の影響を受けず自立的に活動するため、活動資金の大半を民間からの寄付でまかなっています。1999年にはノーベル平和賞を受賞しました(参照:国境なき医師団)。

(3)セーブ・ザ・チルドレン(Save the Children)

セーブ・ザ・チルドレンは、1919年に発足した子ども支援専門のNGOです。「緊急・人道支援」「保健・栄養」「教育」「子どもの保護」「防災」「子どもの貧困」など、子どもたちの権利の実現・保護のために幅広い活動をおこなっています。

世界約120カ国・4800万人を超える子どもたちを支援しています(2022年時点)。日本国内では主に以下のような活動をおこなっています(参照:Save the Children)。

● 経済的に困難な状況にある子どもたちへの給付金提供
● 子どもの声や子どもの権利をもとにした社会啓発と政策提言
● 各地域で子どもたちのために活動するNPOの支援

(4)赤十字社

赤十字は、スイス人実業家アンリ・デュナン(第1回ノーベル平和賞受賞者)の提唱によって1864年に誕生した人道支援団体です。赤い十字のマークは、誰もが目にしたことがあるでしょう。

「人の命を尊重し、苦しみのなかにいる者は、敵味方の区別なく救う」ことを理念とし、戦争犠牲者や災害被災者たちの救援・医療・保健・復興支援・開発協力など、さまざまな活動をおこなっています。

世界191の国と地域に広がる赤十字・赤新月社のネットワークを生かして活動しており、日本においては「日本赤十字社」があります(参照:日本赤十字社)。

(5)WWF

WWFは、1961年に発足した環境NGOです。「人と自然が調和して生きられる未来」の実現をめざして、世界100カ国以上・7000人ものスタッフが活動をおこなっています。パンダのロゴマークに見覚えのある人も多いでしょう。

WWFでは、地球温暖化の防止・野生動物の保護・自然環境の保護など、環境問題に関する幅広い活動をおこなっています。

1971年、日本では「WWFジャパン」が世界で16番目のWWFとして設立され、国内外の問題に取り組んでいます(参照:WWFジャパン)。

5.あなたも社会や世界のために動き出せる

世界にはたくさんの国があります。どんなに平和を願ったとしても、悲惨な戦争が繰り返される事実を、私たちは知っています。

それでは、権力を持たない一般の人々は、戦争に対してただただ無力で、何もできないのでしょうか。そうではないことを、NGOやNPOの活動は教えてくれます。

NGOもNPOも、社会や世界のために活動する非政府・非営利の市民組織です。たとえA国の政府とB国の政府が戦争をしていても、両国の市民同士が戦争をしているとは言えません。一人では何もできなくても、思いを同じくする市民が集まり組織化されれば、大きな役割を担うことができます。

政府でなくても、組織はつくれる。お金のためでなくても、人々は活動できる。考えてみたら、これは社会や世界を変える大きな可能性ではないでしょうか。

多くのNGOは、あらゆる権力の影響を受けることを嫌い、自立的に活動するために寄付を募っています。「たかが寄付」と思われるかもしれませんが、そうした寄付があるからこそ、現実に助かる人々が存在し、救われる動植物があります。たとえ実際にNGOで働いたり活動したりしなくても、寄付を通して活動に参加することができます。

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