還暦でライフネット生命を開業し、古希で立命館アジア太平洋大学(APU)の学長に就任した出口治明さんが9月20日、朝日新聞社主催の「ReライフFESTIVAL@home」に登場します。近著『還暦からの底力』で「60歳は折り返し地点にすぎない」と語る出口さん。どんな生き方をアドバイスしてくれるのでしょうか。
年齢の縛りから自由になろう
読書家として知られ、歴史・哲学・宗教に造詣(ぞうけい)が深い出口さんは「秦の始皇帝が最後に望んだのは不老長寿。日本はその社会に近づきつつある。高齢化社会は決して暗いことではなく、素晴らしいこと」と語る。その上で「人生100年時代を楽しむためには健康が大事。寝たきりにならないためには、働くことが一番の方法になる」という。
出口さんは、日本の「一括採用、終身雇用、年功序列、定年」というワンセットの労働慣行は、戦後の人口増加と高度経済成長を前提にしたモデルだったと指摘する。「人間には個体差があり、意欲も一人ひとり違う」。米国や英国など多くの国々には定年がない中で、「日本はまず定年制を廃止すべきだ」と説く。健康寿命を延ばすだけではなく、働き続けて収入を得ることで、老後資金の不安解消にもつながるからだ。
「還暦ベンチャー・古希学長」を体現した出口さん自身は、年齢を意識したことはないという。古今東西、還暦を過ぎてからも活躍する人はたくさんいる。「もう年だから、と年齢を隠れみのにして自分にブレーキをかけないで。年齢の縛りから自由になる『年齢フリー』社会を目指すべきです」と呼びかける。
還暦からの底力 チャレンジを
出口さんは、物事を正しく見るためには、各人が持つ固有の価値観や人生観という「色眼鏡」を外し、「タテ(歴史)・ヨコ(世界)・算数(データ)」の視点で捉えることが大切だと話す。新型コロナウイルスの流行で生活への影響が続く一方で、テレワークが格段に進んだ。「14世紀のペストの流行はルネサンスを生み出した。コロナは働き方改革を進めていく」と語る。
還暦からの「底力」を発揮するにはどうしたらいいのか。長時間労働を前提にした「メシ・風呂・寝る」という生活を続けていては、新しいアイデアは生まれず、日本経済は立ちゆかない、と指摘する。出口さんは、いろいろな人に会い、たくさん本を読み、面白いところへ行き、そこから学びを得る「人・本・旅」の生活に切り替えることが大切だと提案している。
「好きなことをもう一度勉強し直してもいい。自分にとって面白い人生にチャレンジする。これこそが人生100年時代の醍醐味(だいごみ)です」と話す。
◇
9月20日午後2時から、「還暦からの底力」をテーマに、大分県別府市のAPUと全国の読者をつないだオンライン講演会の動画を配信します。冒頭で出口さんは「コロナとは何でしょうか」と投げかけ、コロナ禍の社会について解説。コロナというピンチをチャンスに変えていくための働き方と心構えを語りました。
参加者からは「年齢であきらめない姿勢を持ち続けられるのはなぜか」「時間の使い方をどう工夫しているのか」などの質問が相次ぎ、白熱した議論が交わされました。
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