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池上彰さんと考える コロナ禍、その先の教育

2021.01.13

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大学入試改革や教育のICT化が進行する一方、2020年は予測不能な感染症の拡大が教育現場にも大きな影響を与えました。激変する環境に対応する学びや、これから求められる力は何か。11月22日、渋谷ヒカリエにて朝日新聞EduAのイベントが開催され、ジャーナリスト、教育者による講演会とパネルディスカッションが行われました。(主催:朝日新聞社 協賛:SAPIX YOZEMI GROUP)

第1部 講演 変革の時代の中で、どう学びどう備えるか

時事ニュースの読み解きで身につく力とは

池上 彰氏(ジャーナリスト)
池上 彰氏(ジャーナリスト)

新型コロナウイルスの感染拡大には、政府も本当に困っています。感染防止が優先か、経済活動か。社会に出ると、誰もが常にこういう正解のない問題を考えなければなりません。今までの中学・高校の試験には必ず正解があったでしょう。しかし、これからは答えを出すだけでなく、問題に取り組む姿勢、自分の頭で考えて判断する能力が問われてきます。時事問題に関心を持ち、いろいろなニュースを見聞きする生徒は、やはり考える能力が身についてくると言えるのではないでしょうか。アメリカ大統領選挙を見れば、日本との国の成り立ちの違い、政治の仕組み、地方自治のあり方を学ぶでしょう。コロナウイルスのニュースは、ウイルスと細菌の違い、DNA型よりRNA型が変異しやすい、など科学の学習につながります。流布したデマを信じ込まないためにも、普段から常識を身につけ、疑わしい話は立ち止まって考える、そういう力も求められています。

多くの学校で、休校中はオンラインでの授業が行われました。私も複数の大学で教えているのですが、200人教室で対面の講義をするよりも、リモートでやるとチャットの機能で、どんどん質問が出てくるのです。また、講義の前に教材を大学のサーバーに上げ、学生はそれを読み込んだ上で授業に臨むという、いわゆる反転授業も実現。結果的に充実した個別の指導ができました。もちろん対面のほうがいいことは当然ですが、リモートでもやり方によっては新しい可能性が出てくると言えるでしょう。これは、教師の教え方が問われることでもあります。

現代の状況と似たものに、14世紀にヨーロッパで流行したペストがあります。ヨーロッパの人口の3分の1が亡くなったといわれ、これをきっかけに当時の教会の権威が失墜し、ルネサンスにつながりました。また、100年ほど前にはスペイン風邪というインフルエンザが第1次世界大戦によって広まり、戦況に影響しました。新型コロナウイルスも、日本と世界の歴史を大きく書きかえようとしています。しかし、悪いことばかりではなく、ペストの時は今と同じように劇場が営業停止になり、暇になったシェイクスピアが新たな傑作を書きました。大学が閉鎖になって、ケンブリッジから故郷に戻っていたアイザック・ニュートンは、家の庭で万有引力の法則を発見したとも言われています。

子どもたちにとって、今年の経験は本当に大変でしたが、その中でも学びは維持することができるし、世の中に新しい理論や文学作品が生まれることもある。2050年にこの時代を振り返った時、「新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけに、IT化が急速に進み、在宅学習や在宅勤務ができるようになった、子育てもしやすくなった、介護離職をしないで済むようになった」と書くことができるでしょうか。これからの生徒・学生諸君には、未来からの視点で考えてほしい。自分たちが歴史をつくっていくんだという観点で生きることが大事だと思います。

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