(社説)生徒指導 子どもの権利踏まえて

社説

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 小中高の教員が生徒指導の際に参考にする手引書「生徒指導提要」が、12年ぶりに見直されることになった。子どもの視点に立ち、その権利をより重視した内容になる。改訂版の考えを現場が理解し、着実に実践されるよう期待したい。

 深刻ないじめ事案の発生や不登校の広がり、外国籍をはじめとする多様な背景をもつ児童・生徒の増加など、近年の学校を取りまく環境の変化を受け、文部科学省が有識者会議を設けて検討してきた。

 改訂版(案)は、子どもの権利条約の原則に基づき、子の最善の利益や自らの意見を表明する権利を踏まえて指導にあたることを強く打ち出した。

 代表的な例が校則をめぐる記述だ。髪形から靴下、さらには下着の色までこと細かに規定した不合理な縛りが、この間、各地で問題になってきた。

 改訂版は、学校内外の人が参照できるように校則をホームページで公開するなどし、教育目的に照らして適切な内容か、本当に必要な決まりか、絶えず見直すことが求められるとした。その際、子どもの意見を聞き、子ども同士で議論する必要性も盛り込まれる見通しだ。

 こうした方針を先取りして、子どもが保護者や地域の住民と議論を重ね、実際に校則を改めた事例もある。自分たちで考えてルールをつくる経験をすることで、責任感が増したり、社会に主体的にかかわる意欲を持つようになったりする効果が表れているという。全国の学校に広げたい動きだ。

 部活動や授業で教員から暴力や侮辱を受けた子が、自殺や不登校に追い込まれる「不適切指導」をめぐる記載も変わる。事実確認が不十分だったり、連帯責任を負わせたりする行為を「不適切」として例示。指導後のフォローを行うことの大切さも指摘する。

 6月には子の権利の保障をうたう「こども基本法」が成立した。今回の改訂版と共通する、子を「成長させる」のではなく「自ら成長するのを支える」という考え方は、これからの時代にかなう。発達障害性的少数者の子へのきめ細かな対応にも欠かせない姿勢である。

 大切なのは現場への浸透だ。現行版は200ページを超えるうえ内容・体裁とも読みにくく、存在自体を知らない教員もいる。今回デジタル化し、目次をクリックすると該当部分ページが開くような工夫をした。上手に活用してもらいたい。

 ていねいな指導をするには、教員が子どもと向き合う時間を十分に確保する必要がある。そのためにも学校の働き方改革を急がなくてはならない。

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