東日本大震災を経験した岩手県内の関係者は、能登半島地震の被災地の現状に何を想(おも)い、何を伝えたいか。それぞれの立場や世代から語ってもらった。
「被災者第一」国や県は危機感を
●元岩手県職員、元大槌副町長 大水敏弘さん(53)
1月下旬、能登半島地震の被災地を訪ねました。復旧・復興に東日本大震災以上に苦慮するのは確実です。三陸は津波の被害は甚大でしたが、内陸と沿岸を結ぶ道路の被害は比較的小さく、早期に確保されました。能登は道路が寸断され、物資支援や応急復旧に行く車だけで渋滞しています。
ボランティアは必要で、多数登録していますが、交通事情が悪くて当面は多くの方が行くことはできません。だとすれば、どのような支援が必要かを考え、選別した方がいい。
がれきの片付けなどの一般ボランティアも大事ですが、避難生活が長期化している被災者の健康面を重視して、炊き出しや心身ケア、傾聴などができるセミプロ的なボランティアを優先させるべきです。移動が困難なので、ボランティアには、学校の空き教室などで1週間くらい滞在してもらうことも考えないといけない。
ホテルに2次避難している人たちも、仮設住宅が建つまでに追い出されないかと心配です。私が国土交通省から岩手県に出向中に震災が起きて、仮設住宅建設に従事しましたが、当時より条件は厳しい。前述のように道路が渋滞し、資材の運搬が大変。近くに宿舎を確保できず、現場と往復する時間がかかって建設に従事できる時間も短い。
岩手に比べ、金沢などは宿泊料の高い高級旅館が多いのも心配。「復興割」で観光客が来るようになったとき、行政から決められた宿泊料しか手当てされない被災者は行き場がなくなる。仮設住宅の整備が遅れると、一般の賃貸住宅に「みなし仮設」として移ることになる。地元に戻りたくても戻れない。そんな状況が生まれ、地域コミュニティーが崩壊しかねない。
それでは「被災者ファースト」とは言えません。これまでは天災でしたが、今後人災が発生することのないよう、国や石川県は危機感を持ってのぞみ、対応のまずさから「被災者」を「被害者」にしないようにしてほしいです。
新しい芽 育てる仕組みを
●大槌新聞社代表理事 菊池…
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