第1回福田元首相が語る「日本の生きる道」 ASEAN諸国の期待はいまも

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 日本とASEAN(東南アジア諸国連合)の関係は、この50年でどのように変容してきたのか。ASEANにとって、日本はどんな存在なのか。長年にわたり東南アジア外交に携わり、現在は日本インドネシア協会の会長も務める福田康夫元首相に聞きました。

ふくだ・やすお 1936年生まれ。59年に丸善石油(現コスモ石油)に入り、76年に衆院議員だった父・赳夫氏の秘書に。90年に衆院初当選。森・小泉両内閣で官房長官を務め、2007~08年に首相。日本インドネシア協会会長。

 ――日本政府は1977年、「東南アジア外交3原則」を打ち出しました。「日本は軍事大国にならない」「相互信頼に基づくパートナーシップを構築する」「対等なパートナーとしてASEANの団結と活力の強化に積極的に貢献する」という内容です。

 父(福田赳夫元首相)が、訪問先のマニラで提唱したため、現在では「福田ドクトリン」と呼ばれています。この時期に、日本とASEAN諸国の関係が大きく変わったのではないか。私はそう感じます。

 戦後、復興と経済成長に伴い、日本は東南アジア市場への進出や自国製品の販路拡大を図りました。これが、「急激な経済進出だ」と受け取られ、日本は強い反発を受けたのです。日本の首相が東南アジアを訪問した際、暴動が起きたこともあったんですよ。

日本は東南アジアとこれからどう付き合っていくべきなのか。地域10カ国でつくる東南アジア諸国連合(ASEAN)と日本の友好関係が50年を迎えた節目に、ゆかりの人々から得た「ヒント」をお届けします。

 量的拡大に励みすぎた反省の上に立って、日本は現地の声を聞き、ニーズに応じて支援をする外交姿勢に転じました。国際協力機構(JICA)などの取り組みを通じて「日本が手がける事業は間違いない」という信頼も、現地で勝ち得ました。東南アジアに対する日本の外交姿勢は、根本的に変わりました。

「ハート・トゥ・ハート」の付き合いがもたらしたもの

 ――今の日本とASEANの…

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    市原麻衣子
    (一橋大学大学院法学研究科教授)
    2023年12月14日10時0分 投稿
    【視点】

    福田康夫元首相の優れた政治感覚は健在なのだと感じさせられる記事です。ASEANから日本の安全保障力に対する期待、増大する中国のプレゼンスとそれに対する懸念など、ご自身が現役でいらした頃のみならず、今の変化もウォッチしていらっしゃるご様子がう

    …続きを読む