よみがえったジョン・レノンの声 ビートルズ「新曲」が示した可能性

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野城千穂
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 ビートルズの27年ぶりにして最後という「新曲」が2日、発売された。ジョン・レノンが生前カセットテープに残した弾き語りのデモ音源から、最新技術でピアノの音やノイズを取り除き、歌声だけを抽出して作った「ナウ・アンド・ゼン」。常に新技術を採り入れて世界を驚かせてきた彼らが、最後に問いかけたものは――。

 1970年代後半のジョンと現在のポール・マッカートニーがハモり、バラード調で「時々君が恋しくなる」と歌う。さらに現在のリンゴ・スターのドラムや、生前のジョージ・ハリソン(2001年死去)のギターが、時空を超えて融合した一曲だ。

 70年の解散後、ビートルズ名義で発表された「新曲」は3曲目。同じくジョンのデモ音源をもとにした「フリー・アズ・ア・バード」「リアル・ラヴ」は他のメンバーの手で曲として仕上げられ、95、96年に発表。一方「ナウ・アンド・ゼン」のデモ音源は特にノイズがひどく、当時の技術では完成に至らなかった。

 21世紀に入り、混ざり合った複数の音から1種類の音を取り出す音源分離技術(デミックス)が急速に発展。ビートルズのドキュメンタリー「ゲット・バック」(21年)で用いられた、メンバーの声や楽器の音を人工知能(AI)で識別し抽出する最新技術が、世紀をまたいだ新曲を可能にした。

 金沢大学オープンアカデミー「ビートルズ大学」学長で音楽評論家の宮永正隆さん(63)によると、もとのデモ音源は、出所不明ながら90年代半ばから研究者や一部のファンの間で出回っていた。宮永さんは、「散文的なデモ音源から曲をまとめ上げたポールには、ジョンがイメージした完成形が見えていたはず。以心伝心ぶりに感動する」と熱く語る。

「『最後の曲』を提示し、見事な結びを示した」

 また「ジョンがメモ代わりに…

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