福島県議会女性わずか5人 地方議員増やす試みも 各党のスタンスは

酒本友紀子 力丸祥子
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 福島県議会は現在、男性が9割以上を占め、平均年齢は60・9歳。議員構成の「多様性」はなぜ必要なのか。どうすれば実現するのか。2日の県議選告示を前に、地方議員の活動から考えた。

 今年8月、郡山市議選で5人の女性議員が議席を得た。38の定数に占める割合はまだ低いが、前回より1人増え、得票数の上位3人を初めて女性が独占した。

 トップ当選は看護師の遠藤利子さん(65)。玉川村出身。郡山市の看護学校を卒業して市内の民間病院で働き32歳で看護師長、54歳で看護部長に。29歳と31歳で出産し、同居の義母らの手を借りて子育てしながらキャリアを重ねた。「皆が親類を頼れるわけじゃない。地域社会が子どもを見て、母親が生き生きと働ける環境をつくりたい」と意欲をみなぎらせる。

 仕事が一区切りつき、看護師の政治組織から立候補した。「議員になるとは夢にも思わなかった」。若い人になってほしかったが、仕事をやめて立候補できる現役世代は見つからなかった。一方で、コロナ禍で医療従事者の待遇改善に社会の目が向くこの時期に看護師が議員になって声を届けるべきだとも思った。

 迷っていた時、地方議員や一般市民の女性の勉強会に参加した。講師を務めた国会議員の話を聞いた。女性の市町村議らと交流し、「議員の仕事や選挙のイメージがわき、背中を押された」という。

 「今の地方議員は比較的自由がきく職業の男性が多い。色んな背景の人が議員になって、多様な意見が政策に反映された方がいい。私が議員になったことで、若い看護師らも続いてほしい」

 勉強会は昨年2月、女性県議の1人が「女性の地方議員を増やすためには政策立案の力が必要」と立ち上げた。国会議員や専門家らを招き、「医療」や「地域経済」などをテーマに5回開き、毎回20~40人ほどが参加する。

 全国に目を向けると、女性議員の躍進が目立つ。

 今春あった41道府県議選では、女性当選者が過去最多の316人。神奈川(定数105)の19人が最多だった。改選前は女性議員が1人で全国最少だった山梨(同37)は2人、熊本(同49)は5人に増えた。22日に投開票された宮城県議選(同59)では、改選前より3人多い10人の女性が当選。女性が立った7選挙区のうち4選挙区で女性候補がトップ当選を果たした。

 福島は現在、県議58人のうち女性は5人。歴代議長に女性はおらず、副議長も2人。今回立候補を予定している71人のうち女性は8人だ。朝日新聞が今年1月時点で、女性がゼロもしくは1人だけの市町村議会の割合を調べたところ、都道府県別で福島県が2番目に高い64・4%だった。

 西郷村議会(定数16)で唯一の女性議員の大竹憂子さん(54)=2期目=はもとは美容師。勤めの傍らPTA役員や放課後の子どもの面倒を見るボランティアを務めていた。活動を通して村長や村議、村職員と接点を持ち、学校関係の要望を伝えたが「外から言っても『予算がない』を理由に進まない」と思い立った。

 大竹さんが住む地区はすでに2人の男性村議がいて「これ以上議員はいらない」と言われた。「地域代表でなく、子育て世代の声を届ける」と地元の推薦をもらわず挑み、村政史上2人目の女性議員になった。

 最初に驚いたのは、議場に一番近いトイレに女性用がなかったこと。更衣室もないため、夏場に汗をかいても着替えられなかった。庁舎内の女性トイレの個室には、サニタリーボックスもなかった。村長にトイレの写真を示して必要性を訴え、全個室に置いてもらった。

 コロナ禍で「生理の貧困」に注目が集まった3年前には、村内の公共施設のトイレに生理用品を置くことを村長に直談判。全国の自治体の先駆け的な動きになった。「東京に住む大学生の娘もバイトがなくなり、生理用品を買うお金に困っていた」。高橋広志村長は「私が気付かない視点を提案してくれる」と話す。

 大竹さんの元には現役の子育て世代に加え、「孫育て」中の人からも相談が寄せられる。これまでに学校の壁の補修や通学路の街灯設置を村側に働きかけて実現させてきた。

 大竹さんは「女性が責任ある立場や政治家になるのはふさわしくない、と考える女性もいる。女性側の意識も変えていかなければ」と話す。「政治を遠い世界と思わないでほしい。女性が増え、職業も多様な人が入ってくれば、もっと面白い議会になる」(酒本友紀子、力丸祥子)

自民党県連(公認予定者31人中女性1人)の西山尚利幹事長

 県議会の3割は女性が必要だと思うが、党で女性優先を掲げていないこともありなかなか増えない。まず市町村議を増やしたいが、PTA会長や消防団員など人脈や社会活動の実績がある男性が多い。県連が実施する政治塾への参加を積極的に呼びかけていきたい。

立憲民主党県連(13人中1人)の高橋秀樹幹事長

 女性を増やしたい思いはあり、志ある人がいれば率先して擁立したい。子育てなど選挙に出にくい事情もあるだろうから、その壁を一緒に取り除き解決していく用意はある。ただ、最終的には本人の決断。それは男性でも女性でも同じだ。

共産党県委員会(6人中5人)の町田和史委員長

 今は女性県議が多いが、政治の世界全体では男性が多い。県委員会では女性を擁立する努力をしている。各政党も努力して比率を正していくべきだ。社会活躍の場などが男性有利につくられてきたからだ。意思決定の場に女性が参加することが大事だ。

公明党県本部(4人中0人)の伊藤達也幹事長

 市町議員を含めた全体では女性が3分の1を占めるまでになった。県議はたまたまこれまでの候補者選定で男性しか挙がらなかった。今回は大変厳しい選挙で現職死守のため候補全員が男性になったが、今後新人を立てる場合は女性を最優先に選びたい。

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