「キウイ」って鳥なんです 見られるのはアジアでは天王寺動物園だけ

田添聖史 玉置太郎
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 茶色の羽毛に覆われた、体長50センチほどの「キウイ」。果物の名前の由来にもなったこの鳥をアジアで見られるのは、実は天王寺動物園大阪市天王寺区)だけだという。半世紀以上に及ぶキウイとの縁を生かそうと、園は企画展やホームページで情報発信に取り組んでいる。

 日本にキウイがやってきたのは、1970年にさかのぼる。大阪万博の開催を記念して、ニュージーランド政府が大阪市に2羽を寄贈。天王寺動物園で飼育が始まった。

 その後、天王寺動物園へ91年までに計7羽が贈られた。だが絶滅危惧種に指定されたため、ニュージーランドからの輸出が制限された。園によると、アジアで見られるのは天王寺だけという。

 園では現在、82年に来た雄の「ジュン」(41)と、91年に来た雌の「プクヌイ」(34)の2羽を飼育。健康に問題がないジュンだけを夜行性動物舎で公開している。

 キウイの寿命は30~40歳前後で、2羽とも高齢だ。園も繁殖に取り組んできたが、成功例はない。

 「天王寺でキウイを見られるうちに、何かできることがあるはず」。飼育展示課の棚田麻美さん(38)が声を上げ、昨年3月、キウイ専門のプロジェクトチームを立ち上げた。

 棚田さんは動物のQOL(生活の質)向上や福祉・教育が専門で、4年前に海遊館大阪市港区)から移ってきた。キウイの愛らしさや、オスが2カ月余りも卵を温めてかえすという生態にひかれた。

 ただ、園に勤めて感じたのは、キウイの認知度の低さだった。果物は知っていても、その名の由来を知っている人は少ない。「まず存在を知ってもらいたい」と、2022年春にキウイの企画展を開いた。

 過去に飼育したキウイの剝製(はくせい)や、ニュージーランドの動物園の協力も得て関係資料を公開。この年の9月に2回目を開いたところ、多い日で1日約2千人が訪れた。アンケートでは半数以上がキウイを「好きになった」「実物を見たい」と答えていて、手応えを感じた。

 園のホームページでは今年4月、担当飼育員が「キーウィ新聞」として特集ページを作り、続刊も企画。棚田さんは「ニュージーランドでは宝物のように大切にされていて、魅力的な鳥。私たちの園はそれを伝えられる立場にあるのだから、少しでも興味をもってくれる人を増やしたい」と話している。(田添聖史、玉置太郎)

     ◇

 キウイ ニュージーランドに生息する、ダチョウなどの仲間の走鳥類。進化の過程で翼が退化し、地面で生活する「飛べない鳥」として知られる。先住民マオリの言い伝えにも登場し、国鳥として硬貨や空軍の紋章にも刻まれている。20世紀後半、天敵となる外来種の増加などで、数百~数千羽まで数を減らしたが、マオリや保護団体の活動で絶滅の危機を脱しつつある。

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