「コシヒカリ発言」の川勝・静岡知事、給与・ボーナス返上しないまま

床並浩一
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 静岡県川勝平太知事が自身の不規則発言をめぐる辞職勧告決議を受け、「責任を取って返上する」とした給料や期末手当の一部計約440万円を受け取っていることが明らかになった。5日に4期目の任期を折り返した節目に、一連の対応が批判を浴びている。

 川勝氏は2021年10月の参院静岡選挙区の補選で野党系候補の応援演説に駆けつけ、米の産地として知られる御殿場市について「コシヒカリしかない」と揶揄(やゆ)する発言をした。県議会は11月、自民会派が主導する形で辞職勧告決議案を初めて可決した。

 川勝氏は辞職勧告を受け入れず、「自らに罰を科す」として、同年12月分の給料約130万円と期末手当約310万円を返上する考えを表明した。

「職責を果たすことでけじめつける」

 だが、公選法の規定で一度受け取った給料の返上は公務員の寄付行為にあたるとして認められず、県条例の改正が必要になる。川勝氏は、改正案を提案するとしたが、議会側と十分な調整をしなかった。12月の支給時期に間に合わず、満額を受け取った後も提案を見送り、今月3日に公開された所得等報告書によると、給料や期末手当を受け取り続けたままになっている。先月30日には約310万円の期末手当が支給された。

 県によると、川勝氏は報道陣を前に「議会側に提案が受け入れられない」「職責を果たすことでけじめをつける」などと発言。返上する意向を示さず、提案の準備をしていないという。川勝氏をめぐっては、09年の知事選で「退職金ゼロ」を公約したが、その後は2期、3期目の退職金としてそれぞれ約4050万円を受け取っている。

 議会で川勝氏の責任を追及してきた天野一県議(自民)は「口先で謝っても、責任を取ろうとしない。政治不信を招いた以上、潔く辞職すべきだ」と批判する。

 県政に詳しい静岡産業大の小泉祐一郎教授(公共政策学)は「そもそも辞職を勧告した議会に給料を返上する条例を提案しても通らない。その自覚がないままに、返上を口にしたことが問題で、政治家としての資質が問われる」と指摘。「(返上するとした)発言が不適切と認め、申し訳ないと謝罪するなど、丁寧な説明が求められるのではないか」と話した。(床並浩一)

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