530人の山村に建てた10億円の新庁舎 14年ぶり村長選は激戦に

吉沢龍彦
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 標高2千メートル級の山に囲まれた多摩川の源流にある「関東で一番小さな村」の山梨県丹波山(たばやま)村が14年ぶりの村長選となっている。人口約530人の静かな山村を二分する激戦は4日に投開票を迎える。

 今春、村を東西に走る青梅街道沿いに村役場の新庁舎が完成した。鉄筋コンクリートにカラマツ材を合わせた2階建てで、大きな屋根が特徴だ。旧庁舎は50年以上使われ、老朽化していた。

 「この4年間、新庁舎建設が最も大きな課題だった。何とか乗り越えることができた」。告示日の5月30日、再選を目指す現職の岡部岳志氏(55)は出陣式で建設の実績をアピールした。

 村は、離島を除くと関東圏で人口が最少の自治体だ。財政規模は年間20億円前後だが、庁舎建設の事業費は約10億円にのぼり、3億8千万円は起債でまかなった。22億円あった基金は16億円前後に減り、今年度当初予算でさらに4億円余りを取り崩すという。

 新顔で元村総務課長の木下喜人氏(59)は「村の財政は厳しい」と指摘。当選後の村政について「収入と支出のバランスを考えながら運営する」と強調した。

過去30年で村長選の選挙は2度

 平成の大合併が取り沙汰された約15年前、岡部氏は民間の立場で村内の検討組織に加わり、「反対」の意思を固めた。木下氏は村職員として論議を支え、村は2人が描いた道を歩む。前村長の急逝に伴う4年前の村長選で岡部氏が無投票で当選すると、木下氏は総務課長などの立場で支えてきた。

 だが今回、木下氏は定年前に退職し、岡部氏との一騎打ちの構図となった。「職員の立場では、やりたいことができない」と動機を語る。

 今回を除いてこの30年でも村長選が選挙戦になったのは2度だけ。選挙カーで村を巡っても2時間程度で、皆が顔見知りとあって選挙ポスター掲示場はない。2人ともマイクの演説は控えめで、夕方には街頭での活動を終える。

 村内は一見静かだが、6人の村議は3対3に応援が分かれた。村の選挙では投票率が90%を超えることもあり、水面下の激しい戦いが続く。(吉沢龍彦)

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