ゆっくりと走る車窓から見た一目千本桜 余震の影響で出会えた偶然

有料記事桜ものがたり

吉本美奈子
[PR]

桜ものがたり2023

 12年前、東日本大震災が起きた約1カ月後、仙台市内では余震が続いていた。不穏な日々に、松尾尚(たかし)さん(62)が父親が亡くなったと連絡を受けたのは通勤途中だった。職場に行った後、家で荷物をまとめ、仙台駅へ向かった。

 入退院を繰り返していた父親。「もっとしてあげられることがあったのでは」

 通夜は福岡で営まれることになった。仙台空港はまだ復旧工事中で、まずは福島まで電車で向かった。

 余震のため、電車は止まってはゆっくり動くことを繰り返す。いら立ちながら、携帯電話で予定の変更や連絡を続けていた。

 1時間ほど経った頃、ふと視線を上げると、ゆるゆると動く電車の右側の窓の外に満開の桜の大木が何本も並んで咲いていた。速度を落として運行していたのか。心境とは裏腹に、明るく華やいだ祭りのような景色だった。

 「慌ててもしょうがない。ゆ…

この記事は有料記事です。残り432文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら