ダウン症の息子「かわいい」と思えなかった私 心のバリア消えた瞬間

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後藤一也
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 「無事に生まれてきてね」

 1年半前、静岡市の女性(37)は、毎日おなかの赤ちゃんに話しかけていた。

 どんな子になるんだろう――。

 結婚して3年近くたっても、夫(36)との間には、なかなか子どもができなかった。

 6回目の人工授精で、やっと赤ちゃんを授かった。高齢出産のため、医師から赤ちゃんの染色体異常を調べる母体血清マーカー検査を勧められた。判定は「陽性」だった。

 結果を確定させる羊水検査には、わずかだが流産のリスクがある。

 夫婦で話し合い、「少しでも流産の可能性があるならやめよう。どんな子でも受け入れて育てる」と決めた。

 それでも心のどこかで、染色体異常のない子であって欲しい、と思っていた。

 おなかの赤ちゃんは男の子とわかり、「響稀(ひびき)」と名付けた。

 それからしばらくたち、妊婦健診で手足の短さを指摘され、紹介された病院に行くと、即入院を言い渡された。

 1日だけ入院を待ってもらい、翌日病院に行くと、赤ちゃんの心拍が弱くなっていた。

 「まずい、今すぐに切って出します」

 心の準備も追いつかないまま、緊急の帝王切開で、1614グラムの男の子を産んだ。

 産声は聞こえなかった。看護師がおしりをペンペンたたき、泣かせようとしていた。

 保育器に入った息子の手を少しだけ握ることができた。特徴的な顔をみて、「ダウン症だ」とわかった。

 「あー……」

 動揺した。お産の前触れもな…

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    岡崎明子
    (朝日新聞デジタル企画報道部編集長)
    2023年3月21日9時0分 投稿
    【視点】

    娘が保育園に通っていたときに、一つ下の年齢のクラスにダウン症の女の子がいました。みんなに可愛がられ、娘も「××ちゃん」と親しんでいました。 ある日、ママ友の一人から耳を疑う言葉を聞きました。「ああいう子がいると、保育士さんも手がかかって他の

    …続きを読む