米中がせめぎあう太平洋 ミクロネシア連邦大統領が語る最優先課題

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聞き手・小暮哲夫
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 小さな島国が点在する太平洋地域。そのひとつ、ソロモン諸島が昨年、中国と安全保障関連の協定を結んだことが、波紋を呼んだ。米国や日本、オーストラリアなどからは、太平洋地域での「中国脅威論」が、にわかに高まっている。ただ、そんな議論から抜け落ちているのは、当事者である島国の視点だ。2月初めに来日したミクロネシア連邦のデービッド・パニュエロ大統領に聞いた。

David W. Panuelo

 1964年生まれ。米国に留学後、外交官に。国会議員などをへて2019年から大統領を務める。

 ――太平洋地域における中国のプレゼンスの拡大が地域の安全保障上の脅威だと、日米豪などが懸念を深めています。この見方をどう考えますか。

 「理解してもらいたい最も大切なことは、太平洋は調和を大切にする、平和な地域だということです。パシフィック(太平洋)という言葉自体、「平和的な」という意味です。私たちは、すべての国々の友人で、誰の敵国でもないということです。これは非常に重要な前提です。太平洋地域に来る人々は、中国であれ、米国であれ、どの国であれ、このことを尊重しなければなりません。そして法の支配に基づいて、国際秩序と民主主義を尊重してほしい」

 「ミクロネシア連邦は、超大国のサンドイッチになってしまっていないか、と尋ねられることがあります。しかし、そんなふうに感じません。なぜなら、私たちは彼らを歓迎しますが、この前提を基本につきあうからです」

 「島国の間には太平洋諸島フォーラム(PIF)という地域機関があり、その機能を強めています。各国は、大国とつきあうときには、この太平洋の家族として、地域の平和や安定につながるように対話をしないといけないと合意しています」

ソロモンと中国の安全保障協定に懸念

 ――あなたは昨年、ソロモン諸島と中国の安全保障に関する協定に懸念を示して、ソロモンのソガバレ首相に書簡を送りました。

 「すべての太平洋の島国には主権があり、二国間関係で個別の権利があります。しかし、他国との協力が、ときにはこの地域で大国間の緊張をエスカレートさせてしまうことがあります。ソロモンと中国の協定はそういうものだと思い、書簡を送りました。ソガバレ氏は私の良い友人です。彼は、私や島国各国の首脳たちに中国の軍事拠点化にはつながらないと保証しました」

パニュエロ氏はソロモンと中国の安全保障協定に懸念を示す一方で、ミクロネシア連邦で米軍が空港や港を使えるようにする計画を進めています。記事後段では中国がこうした動きに脅威と感じることがないのか、太平洋の島国にとっての最大の脅威や、日本にどのようなことを期待するのか話を聞きました。

 ――中国が昨年、島国各国と結ぼうとした多国間協定案「共同開発に関する5カ年行動計画」にも懸念を示して、島国の首脳たちに書簡を出しましたね。結果的に協定案は署名されませんでした。

 「深海底の炭鉱や情報通信分…

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