治療施設で子ども730人死亡 飢饉目前のソマリアで何が

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ヨハネスブルク=遠藤雄司
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 「アフリカの角」と呼ばれるアフリカ北東部で、過去40年で最悪の干ばつが起き、多くの犠牲者が出始めています。特に深刻な状況にあるソマリアでは710万人が食料不足で、5歳未満の子ども150万人が深刻な栄養不足状態に陥っていると国連は推計しています。ロシアによるウクライナ侵攻が拍車をかけているという危機的な状況について、国連児童基金ユニセフ)ソマリア事務所の広報責任者ビクター・チニャマ氏に話を聞きました。

――現地の干ばつの状況を教えてください

 状況は危機的です。10月上旬、バイドアという南部の避難民キャンプや保健センターを訪れました。ソマリアの中でも、最も深刻な影響が出ている地域です。人々の栄養状態は非常に悪く、年内に「飢饉(ききん)」が宣言される可能性は非常に高いでしょう。

 ソマリアの大きな問題は、治安とアクセスです。たとえば2016年の干ばつの時にジンバブエにあなたがいたとしたら、国連世界食糧計画(WFP)のトラックが列を成して、コメやトウモロコシ粉を運ぶ様子を見られたでしょう。しかしソマリアでは、そのようなものをほとんど見ることはありません。理由はシンプルで、イスラム過激派シャバブ」が支配している地域が多く、輸送がとても危険なのです。キャンプに避難してきている人々の多くも、シャバブの支配地域から来た人です。

 かといって、空輸はコストが高すぎます。そこでWFPは、代替策としてキャッシュトランスファーなどを利用して送金しています。食料は地元のマーケットにあるためです。ただし、(ロシアとウクライナの戦争による)食料価格の高騰という問題もあります。

――子どもたちも困難な状況にあるそうですね。

 栄養センターには、深刻な栄養不足状態の子どもたちがいます。子どもたちはたいてい、下痢や肺炎、はしか、コレラなどに苦しんでいます。避難民が暮らすキャンプなども、たいていは人が多すぎる密集状態で、特に栄養不足で弱っている子どもたちは感染症にかかりやすいのです。

 また、水の供給も大きな課題です。川は干上がっていて、長期間続いている干ばつによって地下水位も下がっています。井戸をより深く掘っても、多くの井戸が枯れています。水がないことで、多くの家畜も死にました。牧畜生活をしてきた人は、家畜を失えば食料を探して移住するしかないのです。

子ども730人死亡 「氷山の一角」

――先月のユニセフの発表の中で、今年1~7月だけでソマリアに設置された栄養センターで730人もの子どもが死亡したとありました。その後も増えていますか。

 死亡者をすべて記録するのは…

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