特別支援学校寄宿舎の廃止議論 公平性が根拠に

小野智美
[PR]

 特別支援学校2校の寄宿舎廃止をめぐる県教育委員会の会議録をみると、廃止の根拠として、ひとつのキーワードが繰り返し登場する。「公平性」だ。

 知的障害の子どもが学ぶ特別支援学校は県内に10校ある。このうち、寄宿舎は栃木(栃木市)に48年前、那須(那須塩原市)に44年前に設けられたが、その後、開校した8校にはない。

 2016年6月の会議で県教委の特別支援教育室は2校の寄宿舎廃止の方向を示し、こう説明した。「身辺自立、生活面での家庭での教育的な部分を寄宿舎が担っているということになっている。寄宿舎のない知的障害特支校もある。居住地によって通える学校が決まっている。そうすると教育的サービスの不公平となるので教育的入舎の在り方がどうなのかという問題もある」

 1年後の17年7月の会議でも、他校とのバランスが強調された。

 教職員課 「栃木や那須の高等部生について寄宿舎に残すという方向性はないのか」

 特別支援教育室 「現在は知的障害特支校全てに高等部が設置されているため、栃木と那須のみに寄宿舎を設置する理由はないと考えている。他の知的障害特支校との公平性の観点から説明がつかない。他校の保護者からすれば、栃木は寄宿舎で基本的習慣の指導をしてもらえるのに、なぜ、うちにはないのか、と不満に思うと思う」

 18年11月の会議の資料には、閉舎の根拠として「特別支援学校の適正な配置→知的特支校における寄宿舎設置校と非設置校の公平性を考慮」とある。

 県内には盲学校、聾(ろう)学校などをふくめ特別支援学校計5校に寄宿舎がある。近年、定員割れが続く寄宿舎もあるが、那須は常に定員を上回る入舎希望がある。

 なぜ、寄宿舎間で人気に差があるのか。その理由を分析した会議資料はない。県教委が会議を重ねた6年間、寄宿舎生本人やその保護者への聞き取り調査は行われなかった。(小野智美)

有料会員になると会員限定の有料記事もお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら