「下関国際のプライド」投打で示した仲井慎 敗北の涙をぬぐった先に

太田原奈都乃
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(22日、第104回全国高校野球選手権大会決勝 仙台育英8-1下関国際)

 この夏を投げ続けた右腕で、下関国際の仲井慎君(3年)は何度も涙をぬぐった。「勝たないと意味がない」と臨んだ決勝。優勝をつかんだのは、仙台育英だった。

 「自分がしのげなかった」

 坂原秀尚監督も仲間も認める「ハートの強さ」。甲子園でも満塁の場面でたびたび救援し、ピンチを切り抜けてきた。この日も3点差とされ、なおも2死一、二塁の五回にマウンドへ向かった。

 「絶対に点はやらない」

 打者をにらみ、140キロ超の直球を投げ込む。高めの変化球で空振り三振に切って取り、ほえながらベンチへ戻った。

 直後の六回表、仲井君がたたき付けた内野ゴロの間に、三塁打の赤瀬健心君(同)が本塁を踏み、1点を返した。

 試合は得意の終盤へ。厳しい場面で投げ続けてきたが、仲井君は「肩の張りもなく、疲れはない」と感じていた。ただ、坂原監督が試合後、「満身創痍(そうい)」と言ったように、いつもの球威は失っていた。

 七回、盗塁などで揺さぶられ、1死満塁で迎えた5番打者に高めの直球をフルスイングされた。レフトへ高く上がった打球はどんどん伸びて、観客席に飛び込んだ。

 「甘かった」

 満塁弾で7点差とされたまま迎えた九回。「下関国際のプライドを見せてこい」と坂原監督に送られて打席に立った。力を振り絞ってスイングし、レフト前ヒット。賀谷勇斗君(同)も続いてチャンスをつくったが、ここまでだった。仙台育英の校歌が流れると、涙をこぼし、下を向いた。

 山口大会は準々決勝から決勝までの3試合を1人で投げきった。甲子園の大舞台でも大阪桐蔭(大阪)や近江(滋賀)といった強力打線を封じ、打撃でも活躍。最後まで、「下関国際の野球」の中心にいた。

 「最後まで粘り、やることはできた。だからここまで来れたことに、感謝したい」(太田原奈都乃)

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