「あの人の姉」と呼ばれて…妹の活躍が焦りからうれしさに変わるまで
辻隆徳
小さい頃の妹は、自分の後ろを走っていた。
でも、今は違う。
がむしゃらに妹の背中を追う日々が続く。
あの人の、姉。
不破亜莉珠(ありす)(22)には、ずっと、この言葉がつきまとう。
妹の名は聖衣来(せいら)(19)。姉妹そろって長距離ランナーだ。
姉は言う。
「妹と比べられるのは、よくは思わないです。でも、自分が活躍すれば、それも変わるのかなって」
妹が一躍、注目されたのは拓大1年だった昨年だった。
10月の全日本大学女子駅伝の5区で6人をごぼう抜き。12月には女子1万メートルで日本歴代2位の記録をマークした。
「その頃は、悔しいとも思わなかった。『えー、すごい』って感じ。陸上への気持ちも薄れていた」
ちょうど、約3年半所属していた実業団を離れ、センコーに移籍した頃。
「何かを変えなきゃ」と、もがいていた時期だった。
着実に結果を残してきた妹とは対照的に、姉はいくつもの試練にぶつかってきた。
「高校は一言でいうと、波瀾…
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