10代の妊娠出産を守る シェルター「おにわ」開所

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沖縄タイムス
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 「おきなわの」「にんしんしているおんなのこたちを」「わになってまもる」―。三つに区切ったフレーズの頭文字をつなげて施設名にした。10代で妊娠・出産した少女たちを支えるシェルター「おにわ」が1日、本島内でオープンし1人が入所した。生活困窮や暴力被害などで安心して出産や子育てができない若年ママに、福祉・教育・医療の視点からスタッフが寄り添う。「みんなが行き交う実家のような居場所」を目指している。

 静かな住宅街にある2階建ての一軒家。中に入ると、鳥や草花のデザインが施されたランプ、カラフルなカーテンや家具が目に飛び込んできた。

 「ここに来る女の子たちに『かわいい』と思ってもらい、私たちはいつでも歓迎しているというメッセージを伝えたい」。そんなこだわりを語るのは、現場責任者で琉球大学教育学研究科教授の上間陽子さんだ。アニメのキャラクターが縫い込まれた手芸品は、上間さんが過去にサポートした女性が作ってくれた。

 定員は10~20代の妊産婦2人で、それぞれに個室を用意。利用は原則無料で、週5日常駐する助産師らに見守られながら、産前産後の約5カ月を過ごしてもらう。プライベートを重視し、スマートフォンを預かることもしない。

 「ルールを作って守らせるのではなく、その子に合わせて必要なことを探していく姿勢を大事にしたい。おなかが空いたらご飯があるという安心感も味わってほしい」と上間さんは力を込める。

 県の統計によると、沖縄で19歳以下の母親から生まれた子は2010年からの10年間、年329~480人で推移。全年齢層の出生数に占める割合は毎年、全国平均の2倍を超える。

 上間さんは県内でこの4年、10代で母親になった77人の聞き取り調査を実施。このうち51人に暴力被害があったとし「実家があり、祖母が支えられるケースは何とか持ちこたえられるが、そうでない子が非常にシビアな状況に置かれている」と危機感を抱く。

 オリオンビール奨学財団を通じた助成金で、開設準備を進めてきた。「本来は公が責任を持って取り組むべきだ」としつつ「その動きを待っていたら間に合わない」との切迫感からモデル的に始動し、助成期間が終わる2024年3月までに行政の事業に移行する方向性を描く。

 若年妊娠は一般的に母親の臓器が未成熟で、早産や低出生体重児などのリスクが高くなるとされる。利用者の出産を受け入れる琉大病院周産母子センター部長の銘苅桂子さんは、虐待やドメスティックバイオレンス(DV)の被害も想定し「周産期医療はもちろん、院内の精神科と協力して、さまざまなトラウマに対する心のケアにも力を入れたい」と意欲を見せた。

 上間さんと、同じく琉大教授の本村真さんが共同代表を務め、若年者の就労や生活を支えるアソシア(北谷町)が労務・金銭管理を担当する。児童相談所や子どもシェルター、市町村の保健師らと連携し、緊急支援が必要な少女たちに目配り。退所後に就職や復学を望むケースに備えて、パソコンスキルを持った講師を招いたり、学費援助の道筋を整えたりする。

 県内で若年妊産婦支援に取り組む他団体や関係者とのつながりも重要とし、近くネットワーク会議を立ち上げる考え。本村さんは「よりよい支援に向けて互いの経験や情報を交換しながら、それぞれの持ち味を生かした活動を展開したい」と先を見据えた。

 「おにわ」の問い合わせはアソシア、電話098(926)5175、メールアドレスはinfo@associa-lnd.co.JPメールする。寄付の振込先は沖縄銀行鳥堀支店(普通)1442256。(沖縄タイムス)

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