新型コロナウイルスの重点医療機関である沖縄県立中部病院(うるま市)で発生したクラスター(感染者集団)について、病院が1日に記者会見を開き、詳細を発表した。5月下旬以降、院内で職員と患者の計51人が感染し、うち17人が死亡。一方、県と調整する中で、クラスター情報の公表が見送られた経緯も説明した。

 中部病院によると、院内で最初に感染が確認されたのは5月24日だった。以降、6月30日までに職員と患者の計51人が感染し、うち17人が死亡。亡くなったのは全員が入院患者という。

 最初に確認された感染者は、5月12日に別の病気と診断されて入院した患者。コロナ感染が判明するまでの間、リハビリなどのために病院内を移動していたため、感染を広げた可能性があるという。

 このクラスターについて、県が6月3日に施設名を伏せた上で「うるま市の医療機関で5人のクラスターが発生した」と発表していた。だが、その後の感染拡大については6月30日の県議会で質問されるまで公表していなかった。

 病院も6月10日にホームページでクラスターの発生を公表したが、人数などについては明らかにしていなかった。

 一連の対応について玉城和光院長は、公表しなかったのは「県側の判断」だったとの考えを示した。病院は県に少なくとも6月上旬にはクラスターを公表したいと伝えており、6月11日に記者会見を開く予定も立てたが、県から前日、会見をやめるようにといった趣旨の要請があったといい、直前で取りやめたという。

 玉城院長は「私は公表するべきだったと思う。(病院は)保健所や県にも情報を伝えていたので、隠蔽(いんぺい)をしているわけではない」と述べた。

 これに対し、県の担当者は1日、院内クラスターについて県としての具体的な公表基準がなかったため、記者会見などについては慎重に判断したほうがいいと病院側に連絡はしたが、会見を止める意図はなかったと説明した。

 沖縄県では、院内クラスターの発生は報道関係者向けに医療機関名を伏せて県が公表しているが、県の担当者によると、県立病院の場合、どのように公表するかの基準は「非常に緩やかだ」という。他にも、別の県立病院で5人が感染するクラスターが起きたが、発生を公表していないことも明らかにした。

 県は今後、公表の基準を明確にしていくとしている。担当者は「県民、医療従事者のみなさまに不安を与える結果になったことを申し訳なく思っている」と話した。(国吉美香、光墨祥吾)