武満徹の「伝説の演奏会」 39年の時を経てCDに

有料記事

戸田拓
[PR]

 20世紀を代表する作曲家のひとり、武満徹(1930~96)の作品を札幌交響楽団(札響)が世界初演した伝説的演奏会の模様が、39年の時を経てCD化される。今年は武満の没後25年と札響の創立60周年にあたる。武満が「私の音楽と最も調和している」と評した札響は今年、積極的に武満作品を取り入れたプログラムに取り組む。

 その伝説的演奏会は、1982(昭和57)年6月27日、旧・札幌市民会館ホールで開かれた。指揮は武満と親交が深かった、当時札響音楽監督の岩城宏之(2006年没)。録音は、FM北海道の開局を記念して同年9月に全国ネットで放送された。局内に保存されていた録音テープが16年に見つかったのがきっかけになり、CD化が実現した。

 CDはクラシックレーベルの世界的名門ドイツ・グラモフォン(DG)から出される。札響の演奏をDGが出すのは初めてだ。

 曲目は、「ア・ウェイ・ア・ローンⅡ(弦楽オーケストラのための)」「海へⅡ(アルト・フルート、ハープ、弦楽オーケストラのための)」「夢の時(オーケストラのための)」の3曲(演奏順)。武満は「水」「夢」にまつわる題名の作品を数多く手がけた。3曲はいずれも世界初演だった。自作による演奏会の企画を聞いた武満本人が、「曲目のすべてを世界初演で」と提案したという。

 3曲では「タケミツ・トーン」と呼ばれる、様々な楽器や奏法の組み合わせによる美しい音響が聴かれる。2曲目と3曲目の間には、約50分かけて武満が講演し、客席との質疑応答もおこなわれた。これらも2枚目のディスクに収録されている。

「私の音楽と最も調和」作曲者が愛した音

 岩城は現代音楽の紹介に熱心で、「初演魔」との異名をとった。札響の定期演奏会などで、しばしば武満作品を演奏した。武満は「札響は私の音楽と最も調和しているオーケストラだ」と評したとされる。

 当時のパンフレットに掲載されたインタビューで武満は、「東京のオーケストラには札響のような熱っぽい雰囲気が少ない。札響は技術的にも想像していたよりはるかに高いものをもっている」と語っている。

 この演奏会後の1985年、武満は黒澤明監督の映画「乱」のサウンドトラックの録音に札響を起用した。武満の娘で音楽プロデューサーの武満真樹さんは「『作曲というのは孤独な作業だ』と父はよくいっていた。だからこそ、信頼する岩城宏之さんと札響のみなさんとの新しい音楽作りに大きな喜びを感じていたのでしょう」とコメントしている。

 CDの発売は七夕の7月7日。星のイメージや星座の名も好んで音楽の要素として採り入れた、武満らしい日となった。2枚組みで3850円(税込み)。各種音楽配信サービスでも提供される。

 札響は定期演奏会で武満作品を取り上げる予定で、7月の第639回で「3つの映画音楽」、10月の第641回で「夢窓」を演奏する。6月20日のNHKEテレ「クラシック音楽館」でも、札響の演奏する「乱」組曲が放送される予定だ。(戸田拓)

満席の聴衆、冷笑見返した 元ホルン奏者は語る

 昨年4月まで札幌交響楽団の事務局長を務めたOBの市川雅敏さん(67)は、世界初演でホルン奏者としてステージに立った。1980年代前後の札響について話を聞いた。

 「武満徹さんと札響の協力関…

この記事は有料記事です。残り2047文字有料会員になると続きをお読みいただけます。

【締め切り迫る】有料記事読み放題!スタンダードコースが今なら2カ月間月額100円!詳しくはこちら