ママは100勝ジョッキー 宮下瞳騎手が女性初の大台

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松本龍三郎
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 「息子たちに、かっこいい背中を見せてあげたい」――。その思いが、ママを奮い立たせてきた。

 2度の出産を経て、育児をしながら現役復帰を果たして4年余り。名古屋競馬の宮下瞳騎手(43)が、自身の持つ女性騎手の年間最多勝記録を大きく更新し、100勝の大台を突破した。

 98勝で迎えた12月7日。名古屋競馬第4レース(R)で99勝目を挙げると、6Rは好スタートから先手を奪い、最後の直線で後続を突き放して逃げ切った。快挙を果たし、「夢のような数字でまだ実感がない。達成できたのは、皆様のお陰だと感謝しています」とコメントを出した。この日は、101勝目まで記録を伸ばした。

 中学卒業後に騎手を目指し、1995年10月にデビュー。2005年7月、当時の女性騎手通算最多を更新する351勝目を挙げた。04年には名古屋競馬所属(当時)の小山信行騎手と結婚。11年8月に現役引退し、12年に長男・優心君を、14年に次男・健心君を出産した。

 復帰を決意したのは、当時3歳だった優心君が発した一言。「馬に乗っているママが見たい」。育児のかたわら試験勉強に励み、16年に騎手免許を再び取得した。

 “普通のママ”とは、ちょっと変わった生活を送る。午前1時に起き、担当する馬の調教は日が昇っても続く。途中で抜け出し、子供たちの身支度を整え、学校と保育園へ送る。レースがない日中はジムで体を鍛え、夜は宿題を見てあげたり、一緒にトランプで遊んだり。午後9時には床に就く。

 仕事は常に危険と隣り合わせだ。宮下騎手自身、レース中の落馬で腰、背中、鼻などの骨折を経験してきた。「毎日子供を送って行く時に、もしケガをして会えなくなっちゃったら……というのは、日々頭に浮かびます。だから気合を入れてレースに臨むようにはしています。いつ事故が起こるか分からないから」

 競馬の世界に身を置く以上、勝つ日もあれば、負ける日もある。心の支えとなっているのも、子供たちの存在だという。「今日どうだったって子供に聞かれて、『勝ったよ』って言うと『すごい、おめでとう』って言ってくれて。『負けちゃった、ダメだった』って言うと『明日頑張ればいいじゃん』って。子供に励まされて、パワーをもらっています」

 これまでの最多記録は、一時…

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