歩行中の交通事故、死傷者は小1突出 外歩きの経験浅く

北川慧一 板橋洋佳
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小さないのち 道に潜む危険

 歩行中の交通事故の死傷者は小学1年生が際立って多い。公益財団法人「交通事故総合分析センター」に朝日新聞が依頼して事故データを分析すると、こうした傾向が見えた。小学校の入学を機に親から離れての行動が増える一方で、外歩きの経験が浅く、危険を認知する力がまだ十分でないことなどがうかがえる。

 同センターは警察などから事故情報を提供されている。2015年までの5年間に、歩行中の事故で死傷した小学1年生は8944人(死者は30人)。入学を機にぐんと増え、6年生になると4分の1になる。

 1995年以降について、年齢別の死傷者数をグラフにした。少子化に加えて通学路の安全対策や啓発活動などで死傷者数は減ってきたものの、小1と重なる6、7歳児が最も多い傾向は変わらない。15年の場合、7歳児の人口10万人あたりの死傷者数は約140人で全年齢の3倍に上る。

 なぜなのか。15年3月、東京都内の住宅地で遊戯中に死亡事故が起きた。小1の小日向翔(こひなたかける)君(当時6)は自宅近くで、友達数人と追いかけっこをしていた。狭い路地から幅4・5メートルの生活道路に飛び出したところを、乗用車にはねられた。

 車は直前に角を曲がってこの通りに入ってきた。警察や遺族に対し、運転手は「角を曲がる時に別の方向に気をとられ、気づかなかった」と話したという。父親(43)は取材に「学校も近く子どもが多い所。車が早く気づいてくれれば命まで落とさずにすんだ」と話す。

 歩行者やドライバーの心理に詳しい神作博・中京大名誉教授(交通心理学)は「小1くらいまでは興味のあるものに集中してしまい、大人にとっては思いがけない動きをする傾向がある。危険を認識する力もまだ乏しい。子どもの特性をドライバーがしっかり理解して行動できるように、教習所などで教えることが重要だ」と指摘する。

 今回の分析を依頼した同センターの山口朗・主任研究員は、死傷者数が小1をピークに大きく減ることについて「子ども自身が、どんな行動が危険なのか学んでいくためではないか。入学前に親子で通学路の危険を確認することで、ピークを小さくできる可能性がある」と話す。(北川慧一、板橋洋佳)

「飛び出し」が最多

 「飛び出し」「通学時間帯」「自宅から1キロ圏内」――。交通事故総合分析センターに依頼し、歩行中の小1の死傷事故について2015年までの5年分、8944人のデータを分析した。男の子が6097人、女の子は2847人と男の子が2倍を超えた。

 道路交通法が定める違反別に事故原因をみると、「飛び出し」が37%で最も多く、横断歩道が近いのに別の場所を渡ったなどの「横断違反」が16%。一方、運転手側に信号無視や前方不注意などの違反があり、歩行者側に違反がないケースが39%あった。通行目的では「登下校中」が最も多く、次いで「遊戯中」が多かった。遊戯中の飛び出しの割合は登下校中の倍近くになる。

 時間帯別では、午前中は7時台が12%、午後は3時台の23%がピーク。月別では学校に慣れ始めた5~6月に増え、日没前後の事故が増える10月が最も多い。

 発生場所は自宅から1キロ圏内が83%、500メートル以内でも64%を占める。事故を防ぐには、自宅から身近な道路の環境を子どもに学ばせる重要さがうかがえる。

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